「情けないです…」。白髪混じりの女性は、被告人席に座る我が子を尻目にこう嘆いた。オンラインカジノでバカラ賭博を繰り返していたとして、常習賭博罪に問われた元フジテレビ担当部長の裁判。“不肖の息子”のため、母は恥を忍んで証言台に立った。(前後編の前編)【写真を見る】いかにも遊び人…「ぽかぽか」のプロデューサーだった鈴木善貴被告のSNS***
9月16日、東京地方裁判所725法廷。鈴木善貴被告(44)は、ノーネクタイにダボダボのスーツ姿で現れた。6月23日に逮捕され、7月2日にはフジテレビを懲戒解雇。今は保釈中の身である。軽やかな装いとは対照的に、終始緊張した面持ちだった。
裁判長に職業を問われ「現在は無職です」。起訴事実については「間違いありません」と認めた。
検察官の冒頭陳述や証拠調べでは、鈴木被告が破滅に至るまでの「ギャンブル人生」が明らかになった。
興じたのはもっぱらバカラとビデオスロットゲーム。昨年6月から今年5月までに「エルドアカジノ」に投じた賭け金の総額は約1億7000万円で、ローリングチップと呼ばれるリベート分も含めると約6億円分にも及んだ。今年2月に行われた社内調査では「今はやっていません」と嘘をつき、5月に戒告の懲戒処分を受けた後もやめられなかった。
ギャンブル人生の始まりは大学時代にハマったパチスロ。フジに入社後5〜6年目、同僚と韓国のカジノに旅行した際に“丁半賭博”の魅力に取り憑かれた。「先輩社員」からわざわざ韓国に行かずとも国内でバカラができると、オンラインカジノを教わったことが転落の始まり。そして彼もまた、単純賭博容疑で書類送検された後輩の山本賢太アナに、韓国での“実地研修”の後、違法ギャンブルを伝授したのだった。
だが、本人も己の異常さを自覚していたようだ。1年以上前、金を借りていた知人から「絶対にギャンブル依存症だから病院に行った方がいい」と諭され、しばらく病院に通った時期があった。だが、「結局は自分が我慢できるかの問題」「本当にちゃんとした医師か怪しい」と通院をやめてしまった。
逮捕されるまでオンラインカジノで負けた総額は約3000万円で、抱えた借金は約2000万円。医師であるタレントからも800万円借りていた。懲戒解雇だったため退職金は出なかったが、持ち家のマンションを売って借金はほぼ返済したという。