結党から約70年。危機に立つ自民党の再生を託されたのは、高市早苗・前経済安全保障相(64)だった。4日に投開票された総裁選では、党員らからの幅広い支持を追い風にトップの座に就いた。地元の奈良を中心に「初の女性首相」への期待が高まる一方、有権者の間で保守色の強い言動を不安視する声も根強い。少数与党で迎える船出では早速、手腕が問われることになる。【写真】奈良トヨタの自動車博物館で展示中の高市氏の愛車だった「スープラ」
党内有数のタカ派でもある高市氏は、総裁選でも「古来の伝統を守るために体を張る」などと訴えてきた。明確な根拠を示さずに外国人の問題行動だとして取り上げ、批判を招くこともあった。
9月の所見発表演説会では、外国人観光客を念頭に、奈良公園(奈良市)の鹿に暴行を加えていると主張した。後日、日本記者クラブ主催の討論会で根拠を問われた際は、「自分なりに確認した」と述べるにとどめた。
「神社の鳥居にぶら下がる」「通訳の手配が間に合わないから、逮捕しても不起訴にせざるを得ないと聞く」などの発言もあった。
奈良県内の市民団体が地元事務所に送った質問状に回答はなかったといい、担当者は「確信のない発言は慎み、情報の確実性にも気を配るべきだ」とする。
総務相や経済安保相を歴任した高市氏は対中強硬派の一面を持ち、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入などを主導した。総務省への助言役を務めた情報セキュリティー会社「S&J」の三輪信雄社長(63)は「最も詳しく、理解ある政治家の一人。中露による脅威が増す中、対策を加速してくれるだろう」と期待する。
これまで靖国神社への参拝を続けてきた高市氏だが、総裁選では「適切に判断しなければいけない」と言及を避けた。千葉県柏市の男子大学生(22)は「外国人政策などで、考え方が行き過ぎないようにしてほしい」と求めた。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「排外主義的な姿勢は外交関係に悪影響を及ぼしかねない」とし、「中韓との緊迫は対米関係にも影響し、日本にとって利点はない。新総裁としての発言や行動には、より慎重さが求められる」と指摘する。