司法の歴史が変わるのか。74年前に起きた「菊池事件」です。無実を訴えながら死刑が執行された男性の再審(裁判のやり直し)を認めるかどうか、28日に熊本地裁が決定します。死刑が執行された後に再審が認められれば、日本で初めてのケースです。
1952年、県の北部で役場職員が殺害された「菊池事件」。この職員にハンセン病だと告発されていた男性(当時29)が逮捕されました。男性はハンセン病を理由に隔離された「特別法廷」で死刑判決を受け、無実を訴え続けたものの、1962年、40歳で死刑が執行されました。
「ハンセン病患者」で「殺人犯」の家族という“二重の偏見”を恐れた男性の遺族。60年近く声を上げられずにいましたが、5年前に再審を申し立てました。開かずの扉は開くのか。28日、運命の日を迎えます。
菊池事件のポイントは、死刑が執行された後に再審を求めていることです。
日本で死刑囚の再審無罪は、冤罪「免田事件」の免田栄さんから、おととしの袴田巌さんまで5件あります。しかし、死刑執行後に認められたケースは1件もありません。
どれだけ高いハードルなのか。2014年に袴田巌さんの再審開始を認めた元裁判官、村山浩昭さんに話を聞きました。現在は弁護士を務める村山浩昭・元裁判官。強盗殺人の罪で死刑囚となった袴田巌さんの再審開始を2014年に決断し、再審無罪へ道筋をつけました。
しかし、死刑が執行された裁判のやり直しを認めるのは、国が罪のない命を奪ったと認めることになるため、特にハードルが高いと話します。
■袴田事件で再審開始を決定・村山浩昭 元裁判官
「諸外国でも誤った死刑で執行してしまったということが後になって分かって、死刑制度を廃止している国もあるんです。死刑制度について新たな議論を呼ぶ可能性が非常に高いと思います」
死刑制度の根本を揺るがしかねない、重い判断。菊池事件で弁護団が問題視しているのが、男性が裁かれた「特別法廷」です。裁判官や検察官は証拠品を箸で扱い、無罪を主張した男性の弁護人は検察側に争うことなく、死刑が言い渡されました。最高裁は2016年「特別法廷がハンセン病差別を助長した」として異例の謝罪を行いました。
さらに2020年、熊本地裁は菊池事件の特別法廷が憲法違反だったと認めたのです。
再審請求で弁護団の証人に立ったのが九州大学の内田博文名誉教授です。