口に食べ物が入った園児を何度も平手打ちする女、一方で何事もないように過ごす他の園児たち――。福岡県田川市の私立「松原保育園」で園児2人を虐待したとして、勤務していた保育士の女(25)が暴行罪で起訴された事件。園の防犯カメラには、「異様な光景」(園児の親族)が映っていた。県警は、他の保育士も虐待していたとみて任意で捜査を続けている。(相良悠奨)
「食べたか」「まだのみ込んでいないのか」
同園の5歳児クラス(19人)で昨年8月、怒声が響いた。給食を食べるのが遅れた園児を立たせて責め、顔を繰り返したたく保育士の女。園児は黙ってじっと耐えていた。一方、食べ終えて休み時間に入っていた他の園児たちは驚く様子もなく、無言で過ごしていた。
女から暴行を受けていたという園児の親族は昨夏、園が保護者に公開した防犯カメラの映像を見て驚いた。「暴力に遭ったり見たりすれば、子どもは泣き叫ぶはず……」。大人に言わなかった理由を園児に尋ねると、「(家族が)先生とけんかするでしょ?」と答えた。子どもに我慢させていたとショックを受けたという。
県警によると、女は2021年3月に保育士の資格を取り、4月から同園で勤務。1年目に1歳児クラスを受け持ち、4年余り、このクラスを持ち上がりで担当した。
大阪総合保育大の山縣文治特任教授(子ども家庭福祉)は「園児に暴行に対する回避行動が見られず、虐待に慣れていた可能性が高い。自らを守るため、現実の自分とは別に人格を設ける心理的な乖離(かいり)現象が起きていた恐れもある」と指摘。園児一人ひとりに合ったケアの必要性を訴える。
虐待問題が発覚したのは昨年8月。県警は同11月に女を傷害と暴行の疑いで逮捕し、その後、別の園児に対する暴行容疑で再逮捕した。福岡地検田川支部は同12月、いずれも暴行罪で福岡地裁田川支部に起訴した。
県警によると、女は調べに対し、「多くの園児の担任をする中で心に余裕がなくなり、たたくようになった」と供述している。