2024年9月、埼玉県川口市で起きた乗用車同士の衝突死亡事故。中国籍で当時18歳だった無職の男は飲酒した状態で事故を起こしたとして逮捕・起訴された。【画像】焼酎ロック3杯を飲み時速125キロで逆走…現場では街灯もなぎ倒されていた1年後に始まった裁判の争点は、男が時速125キロで一方通行の道路を逆送したことが危険運転にあたるかどうかで、検察側と弁護側で主張が真っ向から対立している。
事故発生から裁判までの経緯を記者が解説する。
(テレビ朝日社会部・埼玉県警担当 阿部佳南)
2024年9月29日、まだ薄暗い午前5時40分ごろ、51歳の男性はゴルフ場に向かうために優先道路を北に向かって運転していた。
すると、小さな交差点に差し掛かったところで、左側から時速120キロを超える猛スピードで、白いレンタカーが突っ込んできた。男性の車が押し出される形で一回転したことが、事故の衝撃を物語っている。男性はその後、死亡が確認された。
当時18歳の男はカラオケ店で焼酎ロックを3杯飲んだ後にレンタカーを運転して、事故を起こした。
男の車には同乗者2人がいたが、いずれも事故後、徒歩で現場を立ち去った。捜査関係者によると、のちに当時16歳だった中国籍の少年が、家族に付き添われ出頭。男の飲酒を知りながら、車に乗せるよう依頼したことが酒気帯び運転の同乗罪にあたるとして書類送検された。
一方、運転していた男は現場で逮捕された後、家庭裁判所からの逆送致を経て、2024年11月に過失運転致死の罪などで起訴された。2025年3月には危険運転致死の罪などに起訴内容が変更された。
事故から約1年後の2025年9月2日に行われた初公判。法廷に現れた男は、白いワイシャツにスラックス姿で、街中にいる10代の若者と何ら変わらない姿だった。
証言台に立った男は、裁判長の問いに日本語で答え始めた。
日本人と同じように読み書きができるのだという。
もともと両親と離れて中国に祖母と住んでいたという男。
8歳で来日したときに初めて母親に会ったことで、一緒に住みたいと思い日本に移り住んでいた。
裁判長から飲酒運転したことについて問われた男は、滑らかな日本語でこう答えた。
「飲酒して運転したことに間違いない」
しかしその後、こう続けた。
「いつもの状態で真っすぐ運転していた」
裁判長に「過失によって事故が起きたということか?」と問われると「間違いない」と答えた。
この瞬間、「危険運転致死罪」の成立を主張する検察側と、事故は“ミスだった”として「過失運転致死罪」で裁かれるべきとする弁護側の構図が明らかになった。