「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助さん(当時77)。2018年、自宅で急性覚醒剤中毒で死亡しているのが見つかり、約13億円の遺産に関する遺言書の有効性をめぐって、親族らによる控訴審が行われていた。【写真】須藤早貴被告が出演した、大人のための動画DVDのパッケージが掲載されたPOP。セーラー服姿の須藤被告も
大阪高裁は9月19日、野崎さんの手書きの遺言書を「有効」とする一審判決を支持し、親族側の控訴を棄却。親族側が指摘していた元妻・須藤早貴被告(29)による偽造については「憶測に基づくものというほかない」などと判断を示した。
野崎さんの死をめぐっては、2018年12月に元妻・須藤被告が殺人罪と覚醒剤取締法違反の罪に問われ、逮捕されていた。昨年12月、和歌山地裁での公判では「無罪」判決に。公判を複数回傍聴したライターが語る。
「2018年、野崎さんは76歳の時に、55歳年下の須藤さんと結婚。しかし結婚からおよそ3か月後、野崎さんは急性覚醒剤中毒で死亡しました。22回に及んだ公判では、『須藤さんが野崎さんに覚醒剤を飲ませたのではないか』という疑いが焦点になりました。
公判では、事件性の核心である『須藤さんが野崎さんに致死量の覚醒剤を飲ませた方法』という点について、検察側が具体的に指摘できなかった、という印象です。弁護側が『うすい灰色をいくら塗り重ねても黒にはならない』と表現したように、直接的な証拠がなかったことが須藤さんの無罪判決に繋がった」
この判決について検察側は控訴しており、今後控訴審が行われる可能性は高い。一方で須藤被告は現在、別件の罪で服役中だ。全国紙社会部記者が語る。
「野崎さんと出会う前に別の男性から現金約2980万円を騙し取ったとする詐欺罪で、昨年9月に懲役3年6か月の有罪判決を受けています」
注目されるのは、野崎さんの約13億円と言われる遺産のゆくえだ。遺産をめぐっては、元妻である須藤被告、遺言状に「寄付する」とあった田辺市、そして訴訟を起こしていた野崎さんの親族が「三すくみ」の状態になっていた。今回の控訴審では、「田辺市に全額寄付する」という内容の野崎さんの遺言が「有効」と認められた形になる。前出・全国紙社会部記者が解説する。
「今回、遺言書が『有効』とされたことで、基本的には遺言書の通り、全財産が田辺市に相続されることになります。しかし、須藤さんには元妻として最低限保証される『遺留分』がある。須藤さんがこれを請求すれば、遺産の半分である約6億5000万円を受け取ることができます。
一方で、須藤さんが今後の裁判で殺人罪で有罪とされた場合、『遺留分』を請求する権利を失うため、遺言通り遺産の全てが田辺市に引き継がれることになる。検察が控訴した今後の裁判のゆくえに加えて、野崎さんの親族が今回の判決を経て控訴するのかも注目されます」