今年1~8月の特殊詐欺の被害額が5億円を超え、過去10年間ですでに最悪となったことが、徳島県警のまとめでわかった。警察官らをかたる「オレオレ詐欺」が被害額の8割以上を占めており、「捜査対象になっている」などと不安を与える手口が目立っている。(佐藤萌、石井和華)
「あなたに詐欺事件の共犯者としての容疑がかかっている」。7月29日、徳島市の70歳代女性に警視庁の警察官を名乗る男らから電話があった。男らは「身の潔白を証明するためには、保有するお金の紙幣番号を確認する必要がある」などといい、現金を振り込ませたり、家の敷地内に現金を置かせて回収したりして、女性から計約7000万円をだましとった。
県警捜査2課によると、8月末現在の今年の特殊詐欺被害は68件で、前年同期より7件増。被害額は約5億1200万円で、昨年の年間被害額(約4億100万円)を上回っている。このうちオレオレ詐欺は30件で、被害額は約4億3300万円となっている。
オレオレ詐欺に分類される警察官をかたるケースの被害は、2023年が4件、24年が15件、今年(8月末まで)が29件と急増している。29件の被害者は、20歳代7人、30歳代9人、40歳代2人、50歳代3人、60歳代3人、70歳代5人と年齢層は幅広い。
手口の特徴は「逮捕」「容疑」などの言葉を多用することで、相手に恐怖心を植え付けるところにある。LINE上で警察手帳や逮捕状を見せたり、「+」で始まる国際電話でも下4桁を「0110」にしたりして、本物と思い込ませるケースもある。
同課は「警察官などを名乗って動揺させ、疑う隙を与えずたたみかけてくる。『容疑がかかっている』などの言葉が出れば、詐欺だと思って冷静に対処してほしい」と呼びかけている。
県警が特殊詐欺で逮捕と書類送検した容疑者の人数は、23年6人、24年3人、今年は8月末現在で2人。受け子役を逮捕しても指示役らを知らないことが多く、検挙が難しいという。