福岡県糸田町の社会福祉法人「貴寿会」=破産手続き中=の理事選任を巡る贈収賄事件で、社会福祉法違反(収賄)に問われた同会理事長、今宮一成被告(59)=同県香春町=に対し、福岡地裁は19日、懲役1年6月、執行猶予3年、追徴金9400万円(求刑・懲役2年6月、追徴金9400万円)の有罪判決を言い渡した。富張真紀裁判長は「対価として受けた利益は相当高額。非難に値する」と述べた。
判決などによると、借金返済のために法人の売買を考えていた今宮被告は2021年6~7月、会社役員の藤井諭被告(63)=同法違反(贈賄)などで公判中=から指定した人物を理事に就任させるよう依頼され、その見返りとして計9400万円を受け取った。
弁護側は「不正な依頼はなかった」として無罪を主張したが、判決は藤井被告が今宮被告と面談時に理事の変更を条件に挙げ、今宮被告も「依頼を承諾していた」と認定した。定款に定められた手続きを経ずに理事長に就任した藤井被告は、その後、法人名義の預金口座から計約3100万円を着服したとして業務上横領容疑でも逮捕、起訴され、法人の破産にも影響した。判決は、今宮被告が賄賂を得て不正に理事を変更した結果「関係者に重大な不利益を与えた」と非難した。
ただ、理事変更時に従業員の雇用継続などを求めていたことなどを踏まえ、法人を害する意図まではなかったとして執行猶予を付けた。
社会福祉法人は、法人税や固定資産税が原則非課税で、施設整備を巡る助成金でも優遇される。だが、一部の法人で、金銭を授受して事業譲渡する「ヤミ売買」が表面化。17年度までに全面施行された改正社会福祉法で贈収賄の罰則規定が新設された。【森永亨】