工期に追われ「短絡的な」放火、投資額・数十億円の半導体関連工場は改修再開のめど立たず…うなだれる被告

化学大手「三菱ケミカル」(東京)が北九州市に所有する半導体関連素材の製造工場に放火したなどとして、非現住建造物等放火罪などに問われた同社関連会社元社員の被告(29)の審理が福岡地裁小倉支部で進んでいる。公判では、工場の改修工事担当だった被告が工期に追われる中、安易に事件を起こした状況が浮き彫りになっている。被告は法廷で後悔の言葉を口にしたが、見込まれていた同工場に関する投資額は数十億円。工場を今秋にも稼働させ、生産能力を倍増させるはずだった同社側は計画の見直しを余儀なくされる事態となった。(矢野裕作、相良悠奨)【地図】放火事件が起きた工場
「自分が全てをやらなければならないと視野が狭くなり、相談もできず、思考が極端になっていた。幼稚だった……」。同支部で9月19日に行われた被告人質問で、紺色のスーツ姿の兵庫県三田市、無職の被告(懲戒解雇)は当時の心境を振り返った。
起訴状では、被告は2月17日、北九州市八幡西区の工場1階倉庫でライターで火を付けたロウソクを置いて段ボール2個を燃やし、3月7日にも同倉庫の段ボールにライターで火を付け、床や壁など約390平方メートルを燃やした、としている。けが人はおらず、被告は公判で、起訴事実をいずれも全面的に認めている。
検察側の冒頭陳述などによると、世界的に半導体の需要が高まる中、三菱ケミカルグループは2024年6月、同区の元医薬品製造工場について、半導体の材料であるフォトレジスト(感光剤)の主成分となる感光性ポリマーを製造する工場への改修工事を開始すると発表。生産設備の新設に伴う投資額は数十億円に上ると見込んでいた。
被告は同工事の進行の管理や製造設備に関する図面作成などを任されたが、検察側は「被告が工程変更などの度に図面の再作成を求められて徐々に作業が遅れた」と主張。工事に必要な商品の発注も忘れたこともあったという。
被告人質問で、被告は事件に至る心理状況や経緯を説明した。「工期が迫り、焦っていた。『工場を損壊させれば時間の猶予ができるのでは』と頭が一色になり、思考が固まってしまった」。2月の事件前に購入したロウソクを置いて段ボールに燃え移らせたといい、「工事は約2週間中断し、遅れていた作業を進めた」と説明した。

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