再審無罪「松橋事件」国賠訴訟 国と熊本県に賠償命令 県警の取り調べ違法性も認める 福岡高裁判決

1985年に宇城市松橋町で男性が刺殺された「松橋事件」で、殺人などの罪で懲役13年の有罪判決を受けて服役した後、再審無罪となった故・宮田浩喜さんの遺族が、国と熊本県に計8481万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(岡田健裁判長)は27日、国と県に連帯して2381万円の支払いを命じた。県警の逮捕前の取り調べが「宮田さんを自白させる目的で長時間なされ、任意捜査の限度を超えていた」として、一審判決が認めなかった捜査の違法性を認定した。

 事件では宮田さんが捜査段階で「凶器に巻き付け、犯行後に燃やした」と供述したシャツの袖の布片が起訴後に見つかった。昨年3月の一審熊本地裁判決は、検察官が公判で布の存在を明らかにする義務を怠ったとして国に2381万円の賠償を命じ、県への請求は棄却。遺族と国側が控訴していた。

 岡田裁判長は判決で、県警の逮捕前の取り調べが9日間約81時間に上り、10時間前後に及んだ日も多かったと指摘。「極端に長時間で、他に有力な証拠がないまま自白させるため追及を続けた。社会通念上相当と認められる限度を逸脱した」と述べた。その結果「宮田さんが身体的、精神的に疲弊して自白に至り、その後の一連の自白の基礎となった」と判断した。
高裁判決は、遺族が「証拠隠し」などと主張した検察の対応についても「有罪に合理的疑いを生じさせる証拠がある場合は明らかにし、公訴を取り消すか、無罪を論告する義務に違反した」として違法と認めた。

 検察官が自白と矛盾する布の存在を伏せていたことを「いわば握りつぶした形となり、宮田さんが自白に至った取り調べの違法性が看過された。失望を禁じ得ない」と厳しく批判した。

 宮田さんは2019年に再審無罪が確定。20年9月に国賠訴訟を提起し、翌10月に87歳で亡くなり、遺族が訴訟を引き継いだ。

 控訴審判決を受け、弁護団共同代表の齊藤誠弁護士は「任意と称した強引な取り調べの違法性をはっきりと認め、検察の証拠隠しも断罪した」と評価した。

 熊本地検の加藤和宏次席検事は「判決の内容を精査し、関係機関や上級庁と協議の上で適切に対応する」、県警の渋谷明紀首席監察官は「判決内容を精査し、今後の対応を検討する」とのコメントを出した。(清水咲彩)

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