2002年、ニューカレドニアの美しい島で、日本人観光客の女性一人が殺害された。逮捕された二人の男性は裁判の末に無罪となり、島民たちは「真犯人は別にいる」と確信し続けている。【画像】【未解決】「天国にいちばん近い島」で起きた日本人殺害事件に“新展開”─四半世紀を経て見えてきた「解決の糸口」実際、2024年には新たな証言が寄せられたほか、今年2026年には、関係者を巻き込む恐ろしい怪事件が発生した。四半世紀のときを経て、ようやく解決へと動きはじめたこの事件に、仏紙「ル・モンド」が迫る。
「この土地には目がありますので」
草間美香を襲った不幸について問われるたびに、アボ・コニュは24年間、この言葉を繰り返し口にしてきた。彼は、ニューカレドニアの先住民カナックの、コニュという氏族の長である。
日本人観光客の草間美香は2002年5月6日、ニューカレドニアのイル・デ・パン(パン島)で遺体となって見つかった。事件の真相はいまも明らかになっていない。この事件では、アボ・コニュの2人の弟、アンブロワーズ(通称ディディム)とアントワーヌも、従順とはおよそ縁遠い気性が災いして、重い代償を支払うことになった。
自宅にいたこの2人が逮捕されたのは、焼け焦げた草間美香の遺体がカヌメラの岩で見つかって24時間も経っていないときだった。2人はこの岩の守り手であり、住まいも、その岩のすぐそばにあった。
彼らに無罪が言い渡されたのは、7年に及ぶ裁判の末のことだった。その間の2度の裁判で明るみに出たのは、捜査に重大な瑕疵があり、憲兵隊がカナック社会をほとんど理解できていなかった事実だった。
ディディムの弁護士を務めたマリー=ロール・フォーシュは、いまもこう語気を強める。「捜査はあきれるほど杜撰でした」
草間美香の影が「私たちの土地の上に永久にとどまることになった」と語るのは、アボ・コニュの娘オーレリー・コニュだ。カナックの世界では、死者の霊は生きている者のそばにとどまる。日本人女性の霊がとどまっているからこそ、コニュの氏族は、真実を突き止めなければならないという。
「私たちの氏族の名誉のために、そして草間家のご遺族のために」と、オーレリーは言う。