福岡県公安委員会は、特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)の代表者を野村悟被告(79)=二審無期懲役判決、上告中=から、会長の田上不美夫被告(70)=同=に変更したと官報で公示した。約26年間にわたりトップだった野村被告が工藤会への影響力を失ったと判断した。県警暴力団対策部の多良木伸一部長は本紙取材に応じ「工藤会壊滅作戦の通過点の一つ。看板を下ろすまで闘う」と語った。サングラス姿の野村悟被告と田上不美夫被告=2010年4月
県警は2014年9月に壊滅作戦に着手し、野村被告の逮捕以降も、事件摘発を重ねてきた。工藤会の県内の勢力は急速に弱体化し、ピーク時の08年に約1210人いた構成員、準構成員は、昨年末時点で6分の1の約210人に減少した。みかじめ料や賭博といった資金源が細る中、野村被告は長期にわたって「社会不在」となり組織内の求心力を失ったとみられる。
一方で工藤会は関東などに進出し、特殊詐欺や組織的窃盗を行う匿名・流動型犯罪グループ(匿流)とのつながりが確認されている。多良木氏は「水面下で活動の幅を広げ、新たな資金源になっている」と危機感を示し、県境を越えた全国の警察との連携が不可欠だと述べた。
後継の田上被告は元警部銃撃など市民襲撃4事件で殺人などの罪に問われている。二審の無期懲役判決が最高裁で確定すれば、野村被告と同様に、組織での影響力を維持できなくなる可能性がある。多良木氏は、田上被告から新たな会長への代替わりも予想されるとした上で「社会にいる主要幹部は今から組織固めをしてくる。戦略的、波状的な取り締まりで工藤会だけでなく、組織を支える匿流も摘発し、資金源を断つ」と力を込めた。
工藤会の関与が疑われる未解決重要事件はいくつも残る。多良木氏は野村、田上両被告の有罪が確定すれば、事件関係者が供述しやすくなるような「潮目の変化が起きる」と期待しつつも、こう言う。「トップが変わっても市民や企業を狙う工藤会の悪質性は変わらない。被害者や残された家族の無念を晴らすためにも未解決重要事件を解決し、工藤会壊滅に総力を挙げる」
◇ ◇
工藤会代表者の変更を受けて県公安委は、組織の会合に使用される恐れが極めて低くなったとして、暴力団対策法に基づく野村被告の自宅兼事務所(北九州市小倉北区)に対する使用制限を解いた。14年11月から3カ月ごとに繰り返していた命令の延長を見送った。