【ロサンゼルス=増田知基、ニューヨーク=山本貴徳】米移民・関税執行局(ICE)による強引な移民取り締まりを問題視する声が広がっている。ICEの職員が今月、テキサス州とメーン州で車両を停止させようとして移民を相次いで射殺したためだ。ICE側は「職員らに危険が及んだ」などと主張する一方、取り締まりに伴う車両停止措置を一時停止した。
ICE職員は7日、テキサス州ヒューストンでメキシコ出身の男性(52)を射殺。13日にはメーン州ビデフォードで、コロンビア出身の20歳代の男性を射殺した。いずれも、車で移動する男性を止めようとして発砲した。男性らは本来の摘発対象ではなかったと報じられている。
ICE側は、「正当防衛」「公共の安全に危険が及ぶと判断した」などと説明している。だが、現場の映像がSNSなどで拡散し、目撃者からはICE側の説明と食い違う証言が出ており、抗議デモが行われるなど反発が強まっている。メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領とコロンビアのグスタボ・ペトロ大統領も非難した。
こうした中、米メディアは14日、ICEが移民摘発を目的とする車両停止を一時的に中止すると報じた。ICEは発砲事案との関連については触れず、「職員の安全を確保し、街から犯罪者を排除するために手順の見直しを行っている」などと説明しているという。
ICEの強引な取り締まりは、トランプ米大統領が掲げる政策「史上最大の強制送還」が背景にある。ICEが政策の実行部隊となり、トランプ氏はICEを擁護し続けている。
昨年9月にイリノイ州シカゴ近郊で、今年1月にはミネソタ州ミネアポリスでICE職員が射殺する事案があり、妥当性を巡って議論を呼んだ。ロイター通信によると、第2次トランプ政権が発足した昨年1月以降、移民の取り締まり活動に伴って少なくとも7人が射殺されている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ICEは最近、「1日2000人逮捕」との目標達成のために摘発を強化した。職員は移民の自宅や職場に張り込み、相手が車で移動し始めたところを捕らえる手法をとってきたという。
トランプ氏は15日、SNSへの投稿で「ICEの職員は重要で不可欠な任務を遂行している」と鼓舞し、車両の停止措置について「最も効果的な犯罪対策ツールの一つで、放棄してはならない」と強調した。