リゾートや都心に流れ込むチャイナマネーはどのように日本に送り込まれるのか。中国人や中国本土での取材経験が豊富なフリーライター・奥窪優木氏がレポートする。
チャイナマネーによる日本買いが、不動産価格高騰の一因になっているという見方がある。
「顧客の予算の中央値は、1億円から1億5000万円。事業で成功してひと財産築いた人や、20年前に購入したマンションが10倍ほどの価格で売れ、その資金を購入に充てる“普通の人”もいます」
そう話すのは、中国人を主要顧客とする都内の不動産会社経営の劉賢氏(仮名)だ。
中国人顧客が日本の不動産を購入する場合、住宅ローンを組むことが難しいため、現金一括購入が主な手段になる。ところが、中国では、「個人外貨管理弁法」により個人の人民元と外貨の両替は、年間5万ドル(約800万円)までと定められ、事実上の資産持ち出し規制となっている。違反者には、罰金や禁錮刑、私財没収という厳罰が待ち受ける。いくら中国に潤沢な資金があろうと、日本で億単位の物件を購入することは難しい。
劉氏は「関知していない」と顧客の資金調達方法については多くを語らなかったが、テレグラムなどのSNS上には、日本への送金サービス、いわゆる“地下銀行”と思われるアカウントがいくつも存在する。
地下銀行の仕組みは単純だ。中国にある人民元資産から、1億円を日本へ送金したい顧客がいたとする。地下銀行はその資金を中国国内で受け取り、日本国内であらかじめプールしてある資金から顧客に1億円を渡す。資金は物理的には国境を越えず、正規の金融網も利用しないため、中国当局の持ち出し規制も掻い潜れるのだ。
資金があれば“開業”が可能な地下銀行だが、中国でも日本でも違法である。日本国内では1月、30代の中国籍の女が、顧客の依頼で中国から4910万円を国内に送金したとして逮捕されている。この金は港区のマンションの購入資金として不動産業者に支払われていた。
中国人ジャーナリストの周来友氏が話す。
「地下銀行は通常、双方向の送金をバランスよく請け負うことで持続的に営業を行なう。しかし、今は中国から資産を逃避させたい顧客が多く、中国から日本への送金依頼が多い。そんななか、持続的に地下銀行を続けられるのは、日本で継続した収入がある組織のみ。犯罪組織がマネーロンダリングの手段として営業していることも多い」
事実、1月の摘発例も端緒は特殊詐欺の捜査だ。
「送金依頼をした地下銀行が摘発されれば、最悪、カネが返ってこないこともある。取り締まりは中国側でも活発になってきており、今は、仮想通貨で運んだ方が安全」
そう話すのは、違法送金事情に詳しい在日中国人の王宝麟氏(仮名)だ。
ただ、中国では仮想通貨取引は違法で、取引所も存在しない。そこで利用されるのが相対取引だ。
「中国国内で、相対屋(相対取引業者)と対面での現金取引で仮想通貨を購入し、日本で再び相対屋を使って現金化することで、日中の金融当局に知られることなく資金移動ができる」(王氏)