はま寿司の「客テロ事件」で問われる プラットフォーマーの責任と企業の自衛策

回転すしチェーン「はま寿司」の店舗で、レーン上の商品に洗剤のような液体をかけた40代の男性が逮捕された。被害を受ける側もイメージダウンしかねないこうした事態に対し、企業はどのような自衛策や対応を取ればいいのか。【画像】動画はSNSに投稿・拡散されたネットメディア編集者として、これまであまたの炎上案件を見てきた経験から考える。
問題の事案は2026年5月、埼玉県内の「はま寿司」で起きた。各社報道やSNS動画などによると、容疑者は注文したマグロのすしに、食器用洗剤のボトルに入った液体をかけた。その様子を動画で撮影し、SNSへ投稿したという。

 一連の行動により、運営会社の業務を妨害した疑いがあるとして、逮捕に至った。運営するゼンショーホールディングスは、損害賠償なども視野に入れた対応を検討すると報じられている。

 回転すしチェーンでの“客テロ”行為は、ここ数年よく話題になっている。もっとも知名度が高いのは、スシローで起きた「しょうゆペロペロ」事件ではないだろうか。2023年1月、卓上に備え付けられている、しょうゆボトルの注ぎ口をなめる迷惑行為が発生した。

 その様子を収めた動画が拡散されたことから、社会問題にまで発展。うどん店などでも類似事例が相次ぎ、外食業界全体が卓上調味料などの提供方法の変更を余儀なくされた。

 スシローの運営会社は、被害を受けた側にもかかわらず、迷惑行為の影響からか一時株価が大きく下落。約6700万円の損害賠償を求める裁判を起こしたが、後に調停成立により取り下げられている。
スシローの件によって、あれだけ「外食チェーン店での衛生的迷惑行為」が問題視されたにもかかわらず、今なおこうした事案は繰り返されている。なぜ終わりが見えないのだろうか。

 その背景を考えてみると、ひとえに「迷惑行為動画がSNSでの再生数や収益増につながるから」という理由が見えてくる。極端なことを言えば、SNSに上げられたあらゆる動画は、他人に見られなければ意味がない。その目的が金銭的なものなのか、承認欲求なのかは人それぞれだろうが、いずれにせよ「少しでも多く見られたい」と思うのは、表現者の心理として理解できる。

 そして、人に興味を持ってもらうための近道は“ショッキングな映像”だ。最近ではAIが生成した動画が、その代替になりつつあるが、非常識な光景=見たことのない映像には、常に一定の需要がある。

 そこで問われるのが、SNSや動画共有サイトのようなプラットフォーマーの責任だ。あくまで「場を提供しているだけ」であり、「ユーザーの表現の自由を担保している」との立場を取っているが、「単なる責任逃れではないか」という批判も多く出ている。

 しかし、プラットフォーマーが放任主義を貫けない時代になってきた。2025年4月には、日本国内でも「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」が施行され、誹謗中傷や権利侵害に対して、SNS事業者が迅速な対応を取るよう義務付けられた。

 “客テロ動画”については、情プラ法ではなく、威力業務妨害(執拗にクレームを伝えるなどの行為によって人の業務を妨害すること)という既存の法規制によって対処されている。ただ、時代の流れを考えると、こちらにも今後、適用の気運が高まってくる可能性は高いだろう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする