福岡県嘉麻市の母子生活支援施設に入所する母親が長女に対する殺人容疑で逮捕された事件は、内縁の夫による家庭内暴力(DV)から逃れて入居したはずの施設で3年間、ひそかに夫と同居していたという異例の事態が福岡県警の捜査で明らかになった。施設側は定期的に室内を点検していたが、夫の存在には気づいていなかった。入所者のプライバシーに配慮しつつ、外部からの侵入をいかに防ぐか。関係者は頭を悩ませる。(相良悠奨、新島未南)【写真】福岡県警察本部
「もっと考えて行動しなさい」「だから失敗するんだ」
捜査関係者によると、殺人容疑で逮捕された母親の容疑者(30)は、無職の夫(33)から生活態度を巡って注意や指導をたびたび受けていたという。夫はパート勤務の容疑者に頼る生活だったが、県警幹部は「夫が『主』、容疑者が『従』の関係だったようだ」と語る。
県警によると、2人は5年ほど前に知り合い、交際を開始。2022年春頃に長女(4)が生まれた。当時、3人が暮らしていた福岡市内のアパートの住人たちは「言い争う声を聞いたことがない」と口をそろえる。
容疑者は同年9月、夫からのDVを理由に長女と嘉麻市の施設に入所。その後、既に妊娠していた次女(3)を出産した。県警は毎月、夫からの接触の有無を確かめたが、危険な兆候は確認されないとして、23年3月に対応を終了した。
こども家庭庁によると、母子生活支援施設は、1997年の児童福祉法改正により「母子寮」から改称された。配偶者らからの暴力被害を受けるなどした母子の保護と自立促進を目的とし、全国で3266世帯(昨年3月末時点)が暮らす。男性の入所は想定していない。
事件が起きた施設には複数の防犯カメラが設置され、職員が24時間体制で常駐している。捜査関係者によると、夫が施設に入り込み、同居を始めたのは23年4月頃。こうした施設では入所者の居所の発覚を防ぐため、入所時にスマートフォンを預かられることが多い。