「金づちでたたくと簡単に切れた」事件のせいで教室は閉鎖に⋯元教え子(41)に指を切断されたバレエ講師を襲った『さらなる不幸』(平成28年の事件)

〈「親指がない!」バレエ講師(24)の指を根本から切断…元生徒を凶悪犯に変えた『退会トラブルの真相』(平成28年の事件)〉 から続く【写真】この記事の写真を見る(2枚)「I’ll be back」――玄関に残された不気味な予告は、現実となった。退会を巡るトラブルはやがて、金づちとたがねを手にした凶行へとエスカレートする。講師の指を奪ったその瞬間、何が起きていたのか。

 そして事件後、教室は崩壊し、彼女は職を奪われた。平成28年、東京で起きた事件のその後をお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/ 最初から読む )

◆◆◆
その後、高橋は前言を翻し、〈やっぱり口頭では受け付けることができない。内容証明で退会通知書を送ってほしい〉というメールを送ってきた。

 バレエ教室側はその要求に従った。ところが、今度は〈退会した者が押し掛ければ、警察を呼ばれることもあり得ますよね。でも、それぐらいのことをやっても、すぐに出て来られる。オーナーや講師の自宅に行くことも考えられますよ〉などという脅しのメールを送ってきた。

 オーナーは弁護士に相談。「こういう人間は文面でやり取りしても埒が明かない。言葉尻を捉えて反論されるだけ。一切無視でいい」とアドバイスされ、何も答えなかった。

 すると2カ月後には〈自分の行為の何が問題で退会処分になったのか、まったく理解できない。自分としては退会したと思っていないので、自粛期間が過ぎたら、また通います〉という一方的なメールを送ってきた。

 オーナーは警察にも相談したが、「まだ何も起きていないなら、何もすることはできない」と言われただけだった。

 そんな中、公開していないはずの里美さんの自宅の玄関ドアに《I’ll be back》の文字と、中指を立てた絵が描かれた紙が張られるという“事件”が起こった。
バレエ教室側はこれ以上のトラブルを避けるため、高橋に「これまでのレッスン料を返却する」との連絡を入れ、誠意ある対応で解決を図ろうとした。

 すると、それっきり高橋からの連絡はなくなった。バレエ教室側はホッとしていたが、実際は高橋の怒りが消えたわけではなかった。頭の中では里美さんへの憎しみが離れず、それから半年間、沸々と負のエネルギーをため込んでいたのである。

 高橋はイライラが収まらず、整体師の仕事を辞めてしまった。気晴らしにロシアへ行き、バレエ鑑賞したが楽しめず、「こうなったのはすべてあいつが悪い」と考えるようになった。

 頭に浮かんだのはボコボコに殴ることだったが、よくニュースで容疑者が「殺すつもりはなかったのに、死んでしまった」と供述しているのを見て、「あんなに華奢な女を殴ったら、本当にそうなりかねない。死ぬまでのことはやらないんだったら、指を切ろう」と思い立った。そのための道具として金づちとたがねを用意した。

 事件当日、高橋が朝一番でバレエスタジオを訪れると、里美さんが1人でスタジオのセッティングの準備をしていた。里美さんは反射的に振り向いて「おはようございます」とあいさつしたが、それが高橋だったので怪訝な表情を浮かべた。

「何しに来たんですか?」

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