それでも「退職代行」相談が急増中 「代行を利用したほうが良いケース」と「注意すべき民間業者」の見分け方

新年度に入って1カ月足らず。新社会人らによる「退職代行」サービスを利用しての退職や相談が早くも急増している。ただ、怪しい事業者に依頼してトラブルになったり、安易に利用して後悔するケースも少なくない。それでも退職代行に頼るのか。怪しい事業者を見分け、トラブルを回避するにはどうすればいいのか。【写真】「円満ではなかったかも…」後悔しないために知っておくべき3つのこと*   *   *

■転職試みるも門前払い

「今となっては退職代行を使うべきだったのかどうか、ちょっと思い悩んでいます」

と本音をこぼすのは、昨年、退職代行を利用してマスコミ関係の会社を辞めた男性(25)だ。職場に自由度がないと感じていたが、仕事に慣れるにつれ、業務負担まで大きくなっていった。そのため、思い切って代行を利用した。

 学生時代に映像制作を学んでおり、それを生かそうと同じ業界で転職を試みたが、門前払いが続き、現在も定職に就けていない。

「辞める時に上司や人事部の人の態度がどこか冷たくて…。大きな業界ではありませんから、退職代行を使ってやめたことが知られてしまっているのかもしれません」

■円満ではなかったかも…

 それが事実かは確認のしようがないし、思い込みの可能性もある。退職代行サービスによりスムーズに退社はできたものの、あれは「円満」ではなかったのかもしれないと、今では感じているという。

 退職代行を利用した若者たちからは、プラスとマイナス、両方の反応が聞こえてくる。

「費用もかかりますから、ご自身で退職を伝えられるなら、それがベストだと思います」

 そう指摘しつつ、退職代行に関する知識を持つ重要性を訴えるのは、退職代行サービスを扱う労働組合「私のユニオン」の藤井直樹書記長だ。

 退職代行サービスには (1)民間事業者 (2)外部の労働組合運営 (3)弁護士運営、の3つの形態があるが、できることが違う。
■法的に対応できるのは弁護士運営だけ

(1)民間事業者ができるのは、「本人に変わって退職の希望を会社に伝える」こと。会社が退職を拒否した場合、交渉する権限はなく、会社側にも対応義務はない。

(2)労働組合や(3)弁護士運営は、会社に退職希望を伝えることだけではなく、法律に基づき、未払い賃金などについて交渉する権限があり、会社は拒否できない。

 ただ、会社と法的なトラブルを抱えていたり、裁判に発展したりした場合、対応できるのは(3)弁護士運営だけになる。

 利用を検討するなら、この違いは把握しておいた方がいい。法律に基づいた権限がないのに、できるように匂わす運営者は、明らかに「怪しい」からだ。

■安易な利用に注意喚起

 ただ、こうした基本情報を理解したとて、「安易な利用には注意が必要だ」と藤井さんは話す。

 退職代行を利用した方がいいと考えられる人は、上司との関係性が精神的に負担で言い出しづらかったり、会社に強く引き留められることが想定される場合。また、メンタルに不調を抱えていたり、退職金などの条件交渉が必要だったりする場合は、代行を利用することでメリットが生じやすい。

 一方で、冒頭の男性のように、業界が狭く転職に影響する懸念があったり、会社や上司との関係性が悪くない場合は、冷静に考えたほうがいい。

 退職代行について、「わがまま」などと、会社が不快に受け取ることも多いからだ。

 また、退職代行「モームリ」の代表らが弁護士法違反で逮捕されたことは記憶に新しいが、退職代行を利用してのトラブルも少なくない。

■注意が必要な民間事業者とは

「私のユニオン」には、民間事業者を利用したものの、給与が支払われなかったり、有給消化が認められない、などの問題が発生し、相談にやって来るケースが月に数件はあるという。

 藤井さんは、▽弁護士監修▽顧問弁護士▽労働組合提携、などとうたっている民間事業者には注意が必要だと指摘する。

「自社だけでは退職代行の業務を完遂できません、と言っているに等しい。あえてこうした民間事業者を選ぶ必要はないと思います。退職代行はあくまで『社会のセーフティーネット』であって、その立ち位置にいない利益優先の運営者は、そう遠くない時期に淘汰されていくと考えます」

 一方で、相談する側に問題があるケースも散見されるのだという。

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