30年にわたってドロボー生活を送ってきた50代男性。11回目となる裁判で、弁護人から<盗みを繰り返す理由>を問われると…

お笑い芸人の阿曽山大噴火さんは、1999年のオウム裁判以降1万件を超える裁判を傍聴してきた裁判ウォッチャーでもあります。そこで今回は、阿曽山さんの著書『バカ裁判傍聴記』より、「なんでこんなことやっちゃったの?」と思うような珍事件をご紹介します。【イラスト】カラスの羽根が付いた帽子を被った男性* * * * * * *

◆捜査員にカラスと呼ばれた泥棒

ニュースで大々的に報じられた事件でも、裁判の内容まで報じられるのはごく一部です。そこで、実際に新聞・テレビで報じられた事件の傍聴記を。

・罪名 建造物侵入と窃盗
・被告人 無職の男性(52)

起訴されたのは3件です。

1件目は、令和6年7月10日深夜に、被告人がポストから合鍵を取り出して東京都港区内の焼肉屋に侵入して、現金2万円を盗んだ件。

2件目は、7月27日深夜に、被告人がポストから合鍵を取り出して東京都港区内のクリーニング店に侵入して、現金12万円を盗んだ件。

3件目は、9月25日深夜に、被告人がポストから合鍵を取り出して東京都品川区の居酒屋に侵入して、レジを盗んだ件。

新聞やテレビでは、閉店後の店舗に侵入して売り上げ金を狙った連続盗難事件と報じられていました。よくある事件と言えばそれまでですが、犯人の格好が特徴的であるとしてネットなどで話題になったニュースなんです。被告人は、拾ったカラスの羽根3片を自分の帽子に挿して盗みを行っていたという。

防犯カメラの映像には、カラスの羽根が付いた帽子を被っている男が盗みをしている姿が映っていて、次々と犯行が発覚。警視庁の捜査員からは「カラス」というニックネームで呼ばれていたらしいです。カラスの羽根を身に付けてるからカラスって、ストレートすぎ。ニックネームをつけるなら、アイデアを絞って警察のセンスを見せてほしいですよ。
◆デッド・オア・ドロボー

検察官の冒頭陳述によると、被告人は中学卒業後に会社員になり、20歳くらいからずっと盗みをして生活をしていたそうです。前科は10犯。

被告人質問。まずは弁護人から。

弁護人「なぜ、こんなことをやったんですか?」

被告人「お金が欲しかったからです」

弁護人「令和6年3月に大阪刑務所を出所したと。それからどんな生活をしてたんですか?」

被告人「九州の自宅に戻って、おとなしく生活してました。そして、お金もなくなってきて盗みをしようと、東京に行きました」

一念発起、盗み目的で上京を決意です。

弁護人「また盗みをやったら、刑務所に戻るとは思いませんでしたか?」

被告人「東京ですから防犯カメラも多いですし、最近はリレー捜査もあるんで、捕まる覚悟を決めて上京しました」

リレー捜査とは、街中に設置してある防犯カメラ映像をリレーのように繋いで犯人の足取りを追跡する捜査方法です。東京地裁でも、平成30年代から証拠として提出されることが増えている印象です。前科10犯の被告人にとっては、昔はなかった警察の強力な最新捜査という認識でしょうか。

弁護人「捕まりたいんですか?」

被告人「いいえ。最後にドロボーをするなら、自分の出発点である東京でやろうと覚悟を決めました」

弁護人「覚悟が違う気がしますけどね……」

弁護人も苦笑いです。

弁護人「お金に困ってるなら、盗みなんかより、日雇いの仕事でも何でもやれば良かったじゃないですか?」

被告人「話すと長くなるんで、詳しくは言いませんけど……」

と、天井を見上げて声を低くして、ニヒルな雰囲気で語り始める被告人。

被告人「生い立ちが、まぁ、いろいろあって。人付き合いがうまくできないんです。もう……死ぬかドロボーやるかしかないと思って、東京に来ました」

デッド・オア・ドロボーという究極の二択を胸に、逮捕される覚悟を決めて東京に来たようです。

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