お笑い芸人の阿曽山大噴火さんは、1999年のオウム裁判以降1万件を超える裁判を傍聴してきた裁判ウォッチャーでもあります。そこで今回は、阿曽山さんの著書『バカ裁判傍聴記』より、「なんでこんなことやっちゃったの?」と思うような珍事件をご紹介します。【イラスト】選挙ポスターの掲示板に落書きする男性* * * * * * *
◆罪名 器物損壊、建造物損壊
ありそうなのに聞いたことのない事件の裁判傍聴記。
・罪名 器物損壊、建造物損壊
・被告人 アルバイトの男性(53)
起訴されたのは2件。
一つ目は、令和5年の4月10日午前0時4分、被告人が東京都内の公園内の選挙ポスター掲示板に、油性ペンで「ファスナー」と落書きをした件。
二つ目は、4月12日に霞が関の検察庁の庁舎内で、被告人が部屋の壁に手錠で「ファスナー」とキズをつけた件。
選挙ポスターに落書きをする事件はたま〜に新聞で報じられることもありますが、被告人の場合はポスターを貼る前の掲示板に落書きです。しかも、書いた文字は「ファスナー」という謎のメッセージ。そして、逮捕されたあとには検察庁の壁に手錠でキズをつけるという前代未聞の犯行。しかも、壁に刻んだその文字はまたもや「ファスナー」ですよ。
そこまでして「ファスナー」を残したかったわけとは……。
◆選挙ポスターの掲示板に落書きしてみた
罪状認否で、被告人は「間違いありません」と罪を認めていました。
検察官の冒頭陳述によると、被告人は高校を卒業後に警備会社や大工など職を転々として、犯行当時はアルバイトをしていたそうです。前科は1犯で、今回が2度目の裁判となります。
犯行前日の午後11時過ぎ、被告人は自宅でお酒を飲んでいて、お酒が足りなくなったので近所のコンビニに買い物に出掛けたという。コンビニではお酒と油性ペンを購入。そして近くの公園へ行き、選挙ポスターが貼られる前の統一地方選挙用の掲示板に、油性ペンで「ファスナー」や「グランドピース」などと64カ所も落書き。
落書きをしている途中で警察官から職務質問を受けて、その場で罪を認めたので現行犯逮捕された、というのが一つ目の事件の流れです。
二つ目の事件は、被告人が逮捕された2日後。
検察庁で勾留質問を受けたあと、被告人は部屋のなかで待たされていたそうです。
その部屋には被告人の他にも逮捕された人たちが手錠腰縄で待たされ、1人ずつ順番に部屋を出ることになったとのこと。
そして、被告人が最後に部屋を出ることになり、検察官が部屋からいなくなったスキに手錠で「ファスナー」と壁に刻み、すぐに発覚して逮捕、というのが事件の流れになります。