大好きだった父が突然「親子の縁を切る」、そしてコロナ禍での“自殺” 「創造主」を名乗る占い師の女の逮捕で明かされた「神の国」の真相とは…

2020年8月、和歌山県の海岸で、男性2人の遺体が見つかった。手首にマイクコードが巻かれ、つながれた状態だった。亡くなったうちの1人は、66歳の寺本浩平さん。残された遺書にはこう書かれていた。「コロナで仕事が取れなくなり、私の夢は打ち砕かれました」。死因は溺死。和歌山県警は自殺として処理した。【写真】「『逆らえば地獄に落ちるぞ』住職にマインドコントロールされ、性暴力を14年間受けた」 口をつぐむ大僧正、真実は…
東京都に住む寺本さんの息子、大介さん(仮名)は、かつては父が大好きだったが、こう思った。「自分を見捨てた最低な父親だ」

 それから4年後、状況は一転した。「占い師らが死に関わっているかもしれない」。情報提供を受けた大阪府警の再捜査がスタート。昨年3月、自殺をそそのかした自殺教唆容疑などで、自称占い師の女ら3人が逮捕された。大介さんが直面した父の死の真相は…。(共同通信=長谷夏帆) 

▽優しい父だったが…

 寺本さんは大手電機メーカーに勤務し、オーディオの開発に携わっていた。転勤が多く大介さんとは離れて暮らしていたが、親子の仲は良かった。秋葉原にオーディオの部品を買いに行ったり、関西の単身赴任先に滞在して大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンを楽しんだり、思い出は尽きない。

 「僕の気持ちを一番分かってくれたのが父でした」。学校や家で叱られることが多く、その度に寺本さんがかばってくれた。大介さんの母親と寺本さんは離婚したが、その後も学校の面談や進路相談には足を運んでくれた。優しい父だった。
寺本さんが変わり始めたのは大介さんが高校3年のころ。突然呼び出され、東京・新宿の銀行で書類に名前を書かされた。当時は何のためか分からなかったが、後になって、亡き祖母が大介さんに遺した200万円を引き出す手続きだったと知った。 

 大介さんが20歳になると学費と生活費の振り込みが止まり、「親子の縁を切る」と連絡があった。後日、理由を聞こうと夜行バスに乗って寺本さんが住む大阪に向かった。

 インターホンを鳴らすと出てきたのは知らない女性。「寺本さんはいない。若い女性と結婚し、今はその女性を大切に思っている」。直後に寺本さんから携帯に電話があり、一方的に怒鳴られた。「なんで突然来たんだ。今すぐ東京に帰れ」。それ以来、連絡は途絶えた。 
▽「散骨してくれ。葬式も開くな」

 訃報も突然だった。知らない女性から、寺本さんが亡くなったと連絡があった。

 2020年8月1日、和歌山県の海岸で男性と2人で、遺体となって打ち上げられているのを近所の人が見つけて110番した。2人の手首はマイクコードでつながった状態。「旅立つ私をどうぞお許しください。これからという矢先、コロナ不況で全く仕事が取れなくなり、挽回できず、私の夢は打ち砕かれました」。そう書かれた遺書が寺本さんの自宅から見つかった。

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