2023年、名古屋市中区のアパートの一室で、クローゼットから当時42歳の男性の遺体が見つかった事件。逮捕・起訴された女は入れ込んだホストを巻き込み、一貫して強盗殺人への関与を否定し続けた。裁判で争点となったのは、女の供述の信ぴょう性。名古屋地裁で7日間にわたり開かれた裁判員裁判は、異例の展開を見せた。
事件が発覚したのは2023年11月。岩手県警のもとに、名古屋市の阿部光一さん(当時42歳)の行方不明届が出されたことがきっかけだった。
警察が阿部さんの自宅を訪問すると、クローゼット内で毛布に包まれた遺体を発見。さらに、頭にはフルフェイスマスクやビニール袋などが被せられ、両手首にはロープが何重にも巻かれ拘束されている状態だった。
また、阿部さんが経営していたブランド品買い取り店や自宅から、約7400万円相当の貴金属などが持ち去られていたこともわかった。
強盗殺人事件として捜査を始めた警察は、阿部さんの知人だった内田明日香被告(32)を逮捕。検察はその後、強盗殺人と死体遺棄の罪で起訴した。
1月29日、名古屋地裁で開かれた初公判。グレーのパーカ姿に、マスクをつけて入廷した内田被告は、裁判長から起訴内容について問われると…。
内田被告「死体遺棄については認めるが、強盗殺人については全面否定でお願いします」
弁護側も「内田被告は、男性からの依頼を受けて定期的に性的行為をしていた。その対価として毎回、貴金属や現金100~200万円を受け取り、事件当日も行為の一環として首を絞めた。行為を終えた後にトイレから戻った被告が亡くなっている阿部さんを発見し、パニックになって遺体を遺棄した。決して前もって強盗殺人を計画していたわけではない。持ち去ったものの半分は阿部さんから生前に譲り受けたもの。他の金品についても、占有離脱物横領罪にしかあたらない」として、強盗殺人罪を否定した。
これに対し、検察側は、「被告は9月29日に金を奪う目的で、阿部さんの首を絞めて殺害し、自宅や店舗から金品を奪った」と指摘。犯行の動機については、「入れ込んでいたホストを売上ナンバーワンにしようとした。ホストの売り上げ締め日(9月29日)に犯行に及び、阿部さんから奪ったものを換金して支払った」などと主張した。
その後の被告人質問では…
1.被告が性的行為の一環で首を絞めたのは本当か。
2.強盗殺人を前もって計画していなかったのは本当か。
3.阿部さんが金品を贈与していたのは本当か。
これらの主張に矛盾がないかどうかが審理された。