ベネズエラやグリーンランドに対するトランプ大統領の強権的な振る舞いが続くなか、アメリカ国内でトランプ政権を支える宗教右派「福音派」の人々はどのように受け止めているのか。ベストセラー『福音派 終末論に引き裂かれるアメリカ社会』(中公新書)著者で立教大学文学部キリスト教学科教授の加藤喜之氏に、ノンフィクション作家の広野真嗣氏が聞いた。(全4回の第2回。第1回から読む)【写真を見る】著者・加藤喜之氏が語るキリスト教について「日本人が考えるほど反戦的じゃない」
────ベネズエラ急襲やグリーンランドへ領土的威嚇など、トランプ氏の強権的な振る舞いを誰も止められなくなっているように見えますが、これも福音派が影響を及ぼしているのですか。
加藤:影響しているとすれば、大衆とトランプ氏の距離感です。トランプ氏の言動がメディアでどう報道されるかということを考える必要があります。例えば、マドゥロ大統領の誘拐は、大衆向けのスペクタクル(壮大な見世物)でした。南米の最強と謳われたベネズエラの大統領がニューヨークに連れてこられ、ナイキのスウェットという情けない姿のままあえて顔を晒されるかたちで連行されていましたよね。
アメリカ大衆を惹きつける見せ方を政権がよく練ってあります。その報道を通じて打ち立てられるのは、マッチョで男性的な白人のアメリカ像。文化的リベラリズムの潮流の中で強調された黒人や女性の存在感でなく、「白人は強いのだ」「俺たちはまだ行ける」という意識を描き出しています。
────西部劇で白人の保安官が荒くれ者の先住民を逮捕するみたいな構図?
加藤:そう。外国から見るとトランプは狂人だと片付けがちですが、国内向けにメッセージを送る意図は明確にあったと思います。
────マドゥロ大統領連行の数日後、加藤さんはXで「MAGA派で最も影響力のあるインフルエンサーの一人タッカー・カールソンが、米国は帝国主義の時代に入ったと宣言し」たことに注目されていました。アメリカなんて帝国主義に決まっているんだとも思いがちですが。
加藤:実際、Xではそういうコメントをくれる人もいましたが、少し説明が必要かもしれません。帝国主義をめぐっては3つほど違う層があるのです。