「幼い頃の虐待で心の傷を抱える人は多いです。信頼する大人からされた心身の暴力は、心を深く傷つけます」とは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。【写真】産婦人科医が2歳の娘にも伝えた性的同意の意味。幼いころからの性教育の意味山村さんは「困っている人を救える人になりたい」という気持ちが強い。学生時代は警察官を希望していたが、当時は身長制限があり、受験資格はなかった。一般企業に勤務するが、目の前の人を助けたいという思いは強く、探偵の修行に入る。探偵は調査に入る前に、依頼者が抱えている困難やその背景を詳しく聞く。山村さんは相談から調査後に至るまで、依頼人が安心して生活し、救われるようにサポートをしている。
これまで「探偵が見た家族の肖像」として山村さんが調査した家族のことをお伝えしてきたが、この新連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにして行ったのかも含め、様々な事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。
今回の相談者は大手インフラ関連会社に勤務する40歳の葉子さん(仮名)。結婚3年の夫は同じ年で、元大手外資企業に勤務していたが、葉子さんが妊娠したことをきっかけに会社を辞め、1ヵ月間家にいるという。その行動を疑い、相談をしてきたのだ。しかし話を聞くにつけ、夫は心に問題を抱えているようだ。それが幼いころの影響なのだろうか。そして謎の行動の理由は。
夫と葉子さんは都内の私立大学の同級生として出会います。夫は頭脳明晰で語学堪能、愛嬌がある都会の裕福な家の一人っ子、葉子さんは上京してバイトに明け暮れる苦学生でした。
夫の配慮ない一言から、絶好状態になっていましたが、3年前に再会。離婚歴がある夫からのプッシュもあり、出会いから半年というスピード結婚します。夫はIT関連の高度なスキルを持っており、高い給料を得ていましたが、葉子さんの妊娠が発覚した瞬間に会社を辞め、1ヵ月間家でぶらぶらしているとのこと。
約3年間の結婚生活で、夫には摂食障害があり、性交渉中に目を合わせないなど、何らかの心の傷を思わせる行動に気づきます。かつてはアルコール依存になっていたこともあり、葉子さんは夫の行動が心配です。そこで私たちが行動を調べることにしました。