1986年に福井市で起きた中3女子生徒殺害事件で、殺人罪で服役した前川彰司さん(60)に名古屋高裁金沢支部は7月18日、再審無罪を言い渡した。【写真】再審無罪確定を「重く受け止める」と述べた福井県警の増田美希子本部長
判決は福井県警が知人の供述を誘導し、検察が意図的に証拠を開示しなかったことを認め、「刑事司法全体に対する信頼を揺るがしかねない」と捜査機関を厳しく批判した。
判決を言い渡すと、裁判長は「これからの前川さんの人生に幸多からんことを祈っています」と締めくくった。判決後、前川さんは「やっと無罪を証明できた」と笑顔を見せた。この日以降、たびたび見せていた険しい表情は柔らかくなり、笑顔が増えたように思う。
だが、逮捕から再審無罪となるまでの38年の歳月はあまりにも長い。時間を要した要因の一つは再審における証拠開示に関する明文規定がないことで、証拠開示が進まなかったからだ。
再審制度の見直しを検討している法制審議会(法相の諮問機関)では12月、裁判所が検察に対し証拠の提出を命じ、証拠開示を義務化することで合意した。前川さんが昨年10月の第2次再審開始決定以降、毎週のように街頭に立ち、県外の集会でも登壇して訴え続けてきたことだ。「自分が苦しんだ人生が、他の人の役に立てば」と、無罪を訴える人のために精力的に活動してきて、ようやく一歩進んだ。
これ以上、前川さんのように無罪となるべき人の時間が奪われることのないよう、法制審での議論が進むことを期待したい。(北條七彩)