こりゃストレスもたまるわ!検事が苦しむ「気の遠くなる過酷な作業」とは?「取調べは苦ではないが…」

検事という職業は、世間が想像する以上に苛烈な重圧を伴う。取調べが終わっても仕事は終わらず、机へ戻った瞬間から、調書作成や決裁のための膨大な作業がはじまる。書類の山と時間の逼迫、上司の判断というさまざまなプレッシャー。元検事の村上康聡氏が、検事がその裏側で静かに抱え込むストレスの源を語る。※本稿は、弁護士の村上康聡『検事の本音』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。【この記事の画像を見る】● 取り調べが終わった後に 待ち受ける過酷な作業

 あなたがもし、犯罪の被疑者として逮捕されたとしたら、それが事実であれ、潔白であれ、必死になって罪を免れたいと自己防衛、自己保身を図るのは人間の習性として当然である。

 起訴になるか、不起訴になるかは、天と地ほどの違いがあるからだ。

 検事の取調べで、供述調書が作成されないときは、不起訴になる可能性が高い。そのサインを見逃さないことが、被疑者であるあなたにとって有益だ。

 警察が被疑者の取調べをする場合には、基本的に全部の供述調書を作成し、それに被疑者が署名押印・指印したものが検察庁に送られてくる。

 これを読むことで、検事は、被疑者がどのような供述をしているかを知る。警察の調書も証拠として裁判で使用できるからだ。

 では、検事もまた同様に被疑者の調書を作成するかというと、必ずしもそうともいえない。

 被疑者が検事に警察の調書とほぼ同じ供述をしている自白事件の場合、検事が同じ調書を作成しても意味がないので、起訴事案であっても、警察調書で立証は十分と考え、あえて調書を作成しない場合もある。
それ以外に、不起訴にする場合には、検事はあえて調書を作成しないことがある。

 不起訴にするのに調書を作成するのは意味がない。限られた時間を効率的に使いたい検事にとって無駄な労力だ。

 しかし、不起訴にするにしても、取調べ状況報告書を作り、その中に被疑者とのやり取りを記載しなくてはならない。

 テレビドラマの世界では、取調べで被疑者が認めて一件落着、検事や捜査員が酒を酌み交わす場面があるが、現実は全くそうではない。

 一件落着どころか、取調べの後、検事には何本も調書を作らなければならないという気の遠くなるような過酷な作業が待っている。

 どんなに取調べが上手くいっても、供述内容を調書にしないと裁判で証拠として使えないからだ。

 検事にとって、取調べをすることや記録を読むことはさほど苦ではない。むしろ、そのこと自体に生き甲斐を感じる検事の方が多い。

 しかし、問題は、取調べの内容を供述調書にすることに相当の時間と労力、エネルギーが必要であり、これが大変な重労働であることなのだ。

● 検事にとっての二重のストレス “調書作成”と“上司の決裁”

 私が現役の頃は、検事の机の右か左に、机を直角にして被疑者の横を向いて座っている事務官に、供述内容を文章にして口頭で伝えていた。

 これを口授と言う。

 口授を受けた事務官は、供述調書の定型の用紙に手書きで書くわけだが、どんなに速く書いても、30分間に5、6枚程度が限界だ。調書の枚数を見ると、調書作成にどの程度の時間がかかっているかが大体分かる。

 検事が調書を口授している間、事務官は書き続けねばならず、それは本当に大変な作業で、手が腱鞘炎になる人もいる。

 夏だと、汗が調書に付いてしまうので、前腕部の下にハンカチなどを当てながら書く。

 トイレにも行けない。

 私も新任検事のときに同僚検事の取調べに立ち会って、口授を受けて調書を書いたことがあった。

 緊張もするが、眠くもなる。

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