マンガの神様・手塚治虫さんが描いた『ブラック・ジャック』は、無免許でありながら天才的な外科医であるブラック・ジャックがその並外れたスキルを活かし、数多くの患者を救う物語である。誰もがさじを投げるような難病でさえも手術で救い出すその腕前に、「こんな医者が身近にいてくれたら……」と、憧れるのは筆者だけではないだろう。■【画像】「驚くほどそっくり…」実写版ブラック・ジャックとピノコの姿■しかしクールで冷徹な一面を持つ彼は、患者を救うどころか見殺しにするケースも少なくない。今回は、ブラック・ジャックがあえて患者を助けなかったケースを紹介。なぜ彼は治療を施さなかったのか、その衝撃的な理由を知れば、ブラック・ジャックの人となりが一層分かるはずだ。
※本記事には作品の内容を含みます。
『ブラック・ジャック』は記念すべき第1話から、まさかの患者を見捨てるという驚きの展開から始まる。それが「医者はどこだ!」のエピソードだ、その見捨てられた患者とは、世界一の実業家・ニクラのひとり息子であり、札付きの不良として知られるアクドである。
ある日、アクドは横暴な運転をして交通事故に遭い、瀕死の重傷を負ってしまう。ブラック・ジャックはアクドの体を見て、“治すにはどうしようもない部分を切除して、別の体と取り替えるしかない”と告げる。
そこでニクラは、息子のため無関係の仕立て屋の青年・デビイに濡れ衣を着せて死刑にし、その体をアクドのために使えと指示する。死刑になるデビイは無念の涙を流しながら、母に別れを告げるのであった。
しかしその後、アクドはデビイの母の前に姿を現し、見事なハサミ裁きを見せる。実は彼の正体は、アクドの顔そっくりに整形されたデビイだった。ブラック・ジャックは「からだも心もくさってるやつは手術したってむだだ」とデビイに告げ、親子で外国に逃げるための資金まで援助する。
「あの先生はきっと天使だね」という、デビイのセリフで終わるこのエピソード。まさに痛快なオチで締めくくられ、第1話にして多くの読者の心をつかんだことだろう。