「スパイ防止法」制定を主張する自民党の高市早苗氏が首相に就任。連立を組む日本維新の会も支持しており、その制定がより現実味を帯びている。日本・世界の防諜問題に詳しく、警視庁公安部捜査官で諜報事件捜査に従事した経験を持つ日本カウンターインテリジェンス協会・稲村悠代表理事に現状と課題を聞いた。(共同通信=太田清)【写真】令和版「希代の悪法」が誕生するのか、高市新首相肝いりで関心高まるスパイ防止法 制定100年、終戦で廃止された治安維持法再来の懸念
―国の重要情報を守るスパイ防止法については、既に取り締まる法律があり、その強化で十分との考えもある。自民党総裁選でも高市氏が必要とする一方、茂木敏充前幹事長(当時)、林芳正官房長官(同)が「現時点で必要ない」とするなど意見が分かれた。
「日本には既に、安全保障に係る重要情報を保護対象とする特定秘密保護法、営業秘密を対象とする不正競争防止法、経済安全保障の重要情報へのアクセス権限を制限するセキュリティー・クリアランス制度などがある。特定秘密保護法などでは外国の利益を図る目的で脅迫したり人を欺いたりして情報を取得した場合、罰するよう規定されており、情報を守る法律は整備されている」
「一方で、これらの法律で欠けている点として、重要情報を探す行為については罰則化されていない。例えば外国の情報機関員が重要情報入手のために国家公務員と接触、情報について尋ねるなどした場合などがある。こうした行為を立件できれば、情報の漏えいを未然に防止できる可能性が高まるが、探知行為をどう定義するかの難しさは残る」
―政治的誘導、選挙介入などの外国勢力の工作活動を取り締まる法律を望む声も強い。
「特に整備されていないのは影響力工作への対処だ。その一つが、エージェント(外国代理人)法だ。外国勢力の代理人が日本でロビー活動や広報・PR活動など政治的影響を与える行為を行う場合、その登録を義務づけるもので、米国では同法で中国政府の秘密警察拠点の関係者を摘発するなど活用されている。その必要性については与党内でも合意が得られており、議論の余地は少ないだろう」
―しかし、同様の法律を持つロシアでは、当局の気に入らない個人・団体をスパイとほぼ同義の「外国エージェント」に指定、活動を制限する恣意的運用が指摘されている。
「対象行為や団体を曖昧に定義してしまうと、恣意的運用が懸念される。登録の必要のある活動の定義や要件をしっかり示して透明化を図るとともに、報告義務や審査・監査制度が合わせて必要となる。この法律は外国代理人による活動の透明化を図る法律であり、国民にとってもメリットがある」
―法律を整備したとしても、執行する態勢ができていなければ絵に描いた餅だ。