新幹線は、どこまでも繋がっている。東海道新幹線は新大阪駅からそのまま山陽新幹線に直通するし、山陽新幹線もまた博多駅から九州新幹線へと続いてゆく。【画像】博多から“新幹線で約8分”…ナゾのJR在来線の駅「博多南」を写真で一気に見る細かいことをいえば直通列車が東京から鹿児島まで駆け抜けているわけではないのだが、それでも線路は途切れていない。
なんて、どうでもいいことを博多駅で考えた。博多駅からは東京行きに新大阪行き、そして鹿児島中央行きの新幹線がひっきりなしに出ている。東京より西側にある主要都市には、博多駅から新幹線でものの数時間で行くことができるのだ。
そんな中、博多駅で気になる行き先の列車があった。「博多南行き」。え、いったいこれはどこなんでしょうか……。
博多南というからには、少なくとも博多駅の南方、それほど離れていないところにあることは間違いないだろう。が、新幹線の路線図を穴のあくほど眺めてもそんな駅はない。九州新幹線では、博多駅の次がもう佐賀県の新鳥栖駅である。
博多南駅とは、いったい。まあいくらなんでも別世界に連れていかれちゃう、なんてことはないはずなので、博多南行きの新幹線に乗ってみることにした。
たまたまなのか、そういう設定になっているのか、博多駅のホームに停まっていた博多南行き新幹線はONE PIECEのラッピングを施した車両だった。お客はまばらで、1両に10人程度といったところだろうか。
そして新幹線が動きはじめると、その高速運転の本領を発揮する間もなく、ものの10分足らずで博多南駅に到着した。
幻でも何でもなくて、博多南駅はちゃんと実在する駅だった。
この10分にも満たない新幹線のナゾの旅。これは、新幹線であって新幹線でないようなものだ。というのも、もともとこの路線は新幹線の車両基地への引き込み線だったのだ。
ただ、毎日回送運転だけをしていてももったいない。そんなわけで、1990年に旅客駅業を開始し、博多南線博多南駅が開業したのだ。
こうした経緯がゆえ、博多〜博多南間は新幹線車両しか走らないのに扱いとしては“在来線”ということになっている。特急料金も在来線仕様で、乗車券とあわせて330円ポッキリだ。
これほど安く新幹線、それもONE PIECE新幹線に乗れるのだから、なかなかレアな体験といっていい。となれば、車内にはこのレア体験を楽しむ人ばかり……。と思いきや、案外そうでもないようだ。
博多南線に乗っているお客はだいたいがありふれた、といったらアレですが、スマホを眺めて時間を潰すような、ごく普通のお客ばかりだ。
1面1線、幅の狭いホームの博多南駅に到着すると、彼らは脇目もふらずに改札を抜け、町の中へと消えてゆく。
どうやら、この町では博多南線、珍しいレア路線でもなんでもなく、普通の通勤通学路線として使われているらしい。