宝塚が“見て見ぬふり”続けた「チケット問題」 改革アピールも「完全解決にはほど遠い」と言われてしまう理由

大正3(1914)年に創立された宝塚歌劇団の111周年記念式典が、今月1日に兵庫県宝塚市の宝塚大劇場で行われた。【写真を見る】額に黒いやけどの跡が… 尊い命が失われた「宝塚パワハラ問題」を物語る証拠写真
「本来は110周年を迎えた昨年実施の予定でした。ところが、一昨年9月に宙組所属の劇団員が自殺に追い込まれ、上級生によるいじめやパワハラが明るみに出た。その余波で、1年間延期されていたのです」

 とは宝塚担当記者。式典にはおよそ1100人のOGと、抽選で招待された600人のファンら約1700人が出席した。

「冒頭、歌劇団の親会社である阪急電鉄の嶋田泰夫社長が“事業運営の問題で心痛む状況を招き、心より深くおわびします”と陳謝しました。その後は月組の鳳月杏、星組の暁千星、宙組の桜木みなとら3組のトップスターとトップ娘役のあいさつを経て、歴代作品を彩った楽曲のメドレー演奏や約170人の劇団員による大合唱が始まった。会場は一転して盛り上がりました」

 11年前に行われた100周年式典では、花・月・雪・星・宙5組のトップスターが勢ぞろい。ところが今回は、東京公演に出演していた花組と、名古屋で公演中の雪組トップの二人が欠席した。理由を歌劇団の関係者がそっと明かす。

「二人の欠席こそが、7月に阪急電鉄を離れて株式会社に改組された宝塚歌劇団による組織改革を象徴するものでした。宙組の劇団員が死に至った理由には、公演回数の多さや稽古時間の長さによる過重労働も指摘されていましたから、今回は“地方公演中の二人を式典のためだけに呼び戻すのは負担が大きい”との判断が下されたのです」
コンプライアンスの順守をアピールする新会社の取り組みは、長年にわたってファンを悩ませてきたチケット問題にも及ぶ。

「コロナ禍やいじめ問題などの逆風下でもチケット販売は好調でした。当時も転売は後を絶たず、今年6月には定価の計2万4000円で購入された3枚のチケットが5倍近い11万5000円で転売される事案も発生した。逮捕者が出る事態に発展していたのです」

 歌劇団のチケットを入手する方法は主に3通りある。(1)公式ファンクラブ「宝塚友の会」を通じて購入。(2)トップスターや中堅・若手の劇団員の私設ファンクラブで購入。(3)宝塚歌劇Webチケットサービスや各種プレイガイドで購入。

「ただし、(2)はトップスターの私設ファンクラブが確保したチケットを、同じ組の後輩の私設ファンクラブに分配する仕組みでした。同じ私設ファンクラブといえども、トップスターの組織は発言力が大きい。不人気な公演のチケットを後輩の私設ファンクラブに押し付けるという、パワハラまがいの理不尽な行為も常態化していました」

 こうした悪弊は、ファンクラブに未加入のファンがチケットを購入する機会を阻害する要因とされてきた。それでも歌劇団は、見て見ぬふりを続けてきたという。

「そこで、今月からトップや中堅・若手にかかわらず、すべての私設ファンクラブが、必要な枚数を扱える形に改められたのです」

 それでも問題の完全解決にはほど遠いようで、

「とくに若手を支援する複数の私設ファンクラブからは“歌唱力や演技力とは関係なく、チケット販売の実績が劇団員としての評価にされるのでは”との懸念が示されています」

 歌劇団はその指摘を否定しているそうだが、多くのチケットが売れるのも、スターの大切な資質のような。

「週刊新潮」2025年9月18日号 掲載

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