石破首相戦後80年所感 重要性強調の「文民統制」足元揺らぐ 自衛隊内連携で不備も

石破茂首相は10日に発表した戦後80年の所感で先の大戦に触れ、政治が軍事に優越する文民統制(シビリアンコントロール)の重要性を訴えた。だが肝心の足元の統制は揺らいで見える。直近の自衛隊演習では、今年発足した実動部隊を一元指揮する「統合作戦司令部」と、防衛相らを補佐する「統合幕僚監部」との連携で不備が露呈。文民の政治指導者が軍事組織を適切に従わせるために不可欠な「情報共有」に強い懸念を残した。
7月中旬、東京・市ケ谷などで首都直下地震を想定して実施した自衛隊統合防災演習。統幕は被災者の状況や到着した隊員数などを統合作戦司令部に何度も照会したが、届いたのは誤った数字や不完全な情報ばかりだった。一方の司令部からは「統幕の問い合わせが細かすぎる」などと不満が続出。双方が不信感を強めるできごととなった。

 自衛隊はこれまで、制服組トップの統合幕僚長が防衛相を補佐しつつ部隊指揮などにあたっていた。だが迅速な対応を目指すとして、政府は3月に組織を大幅改編。統幕長から部隊指揮を切り離して政治の補佐役に専念させ、部隊指揮は新設した統合作戦司令官が専任で担う。陸海空、宇宙、サイバーの部隊を一元的に指揮し、かつてない広範で強大な権限を持つ。

 統合防災演習で、この組織改編による「きしみ」が顕在化した。統幕に正しい情報が届かなければ、防衛相や首相ら政治家は適切な部隊運用がなされているかを確認できない。統幕幹部は「司令部の発足当初から懸念されていた問題が浮き彫りになった」と指摘。中谷元・防衛相は7日の会見で「統幕と司令部の情報共有のあり方に反省事項があった」と認めた。

 首相が所感で示したように、自衛隊法は自衛隊の最高指揮権は首相が持つという政治家による厳格な文民統制を定める。

 だが近年、安保環境の変化を理由に自衛隊の役割は飛躍的に拡大し、文民統制が危ぶまれる事案も相次いでいる。24年の海自の潜水手当不正受給を巡っては当時の木原稔防衛相が8カ月にわたり隊員逮捕を知らされておらず、木原氏は「文民統制の観点から非常に問題がある」と認めた。

 今年2月の衆議院予算委員会では、野党議員が現役自衛官の答弁を求めたが認められず、不服を申し立て波紋を呼んだ。国会では文民統制の観点から、責任ある答弁は文民が行うとして自衛官の答弁はタブー視されてきた。だが石破首相はかねて自衛官の答弁は必要と主張しており、今回の所感でも「専門家集団としての立場から政治に対し、積極的に意見を述べることが求められる」と明記した。

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