ドン、ドン、ドン──。ハンマーのようなもので玄関ドアが何度も打ちつけられる。ガラスが割れると、銃を構えた覆面姿の男たちが室内へ押し入る。「赤ちゃんがいる! 落ち着け!」。兄の叫び声を最後に、約35秒の映像は途切れた。【写真を見る】玄関ドアを叩き壊し、兄に銃口を向け…35秒で捉えた襲撃の一部始終
メキシコ東部ベラクルス州ナンチタルで女性ジャーナリスト、ロクサナ・ベレニセ・グスマン・ラミレスさんが殺害された事件で、この襲撃時の映像がSNSで拡散され、国内外に衝撃を与えている。
Xには「彼女が生きて戻ってきてほしい。家族が待っている」「無事に帰宅できることを願っています」といった安否を気遣う声のほか、「ベラクルス州では犯罪が野放しにされている」「国家の安全保障が最優先だ」など、治安悪化を嘆く投稿も相次いだ。
事件が起きたのは6月2日早朝のことだった。ロクサナさんの母親が現地メディアに語った証言によると、覆面の男たちはロクサナさんを家の外へ連れ出して地面に倒し、手錠をかけたうえで殴ったという。当時、ロクサナさんは早朝のランニングに出る準備をしており、異変に気づいて外へ出た父親も、地面に倒されて暴行を受けた。ロクサナさんは武装集団に連れ去られ、そのまま帰宅することはなかった。
拉致から約1か月後の7月3日、ベラクルス州検察(FGE)は、同州の牧場で見つかった人骨について、DNA鑑定の結果、ロクサナさん本人と確認されたと発表した。
海外ジャーナリストが続ける。
「現地メディアは、犯人らがロクサナさんの遺体を金属製ドラム缶に入れ、軽油を使って焼却したと報じています。一方で、英紙『The Sun』は『酸で溶かそうとした』と報じるなど、情報は錯綜しているようです。
ロクサナさんが運営していたニュースサイトでは、傷んだ食品の販売実態や、市の公用車事故を巡って補償を求める住民の訴えなど、地域に密着した問題を数多く報じていました。ただ、州のジャーナリスト保護委員会には、ロクサナさん本人から事件前に脅迫などの相談は確認されていなかったといい、現時点では犯行の動機は明らかになっていません」
実はロクサナさんの一家は、2017年に夫が路上で銃撃され死亡。ロクサナさんは数年間ベラクルス州を離れて生活していたが、その後ナンチタルへ戻り、両親、2人の子ども、兄弟、甥たちと暮らしていた。facebookを拠点とするローカルニュースサイト「Pulso Informativo del Sureste」を立ち上げたばかりだった。