盗まれた品物を質店などで見つけ出し、犯人の特定につなげる「盗品捜査」のエキスパートが福岡県警捜査3課にいる。全国でも突出した功績を持つ波多江弘武警部補(64)だ。見つけた被害品は3300点超。その腕前だけでなく、日々真摯(しんし)に捜査に打ち込む姿は、多くの盗犯刑事の模範となってきた。来年3月の勇退を前に、これまでの歩みや後輩たちへの思いを聞いた。(相良悠奨)【写真】卓球の早田ひな選手が一日警察署長
――盗品捜査を担当するようになるまでの経緯は。
「『悪いやつを捕まえたい』と、小さい頃から警察官を目指していた。高校を卒業して県警に入り、6年目から署の刑事課で盗品捜査を始めた。2か月ほどかかってやっと初めて見つけた被害品が、犯人逮捕につながった時の喜びは今も覚えている。捜査3課に異動して今年で32年目。盗品捜査一筋でやってきた」
――どのように捜査をしているのか。
「毎朝、県内で起きた窃盗事件の概要や被害品の特徴をノートに記した後、各地の質店や古物商をとにかく巡り、被害品が売られていないか、売られていれば誰が持ち込んだのかを調べる。売りに来た人物は、何らかの形で事件に関わっている可能性が高い。見つけたら事件を担当している署や捜査班に詳細を引き継ぎ、容疑者の特定に活用してもらう。被害品が一覧できるノートを作る手法は若い頃に独自に編み出した」
「店側からの連絡が端緒になることもある。怪しい人物が来たり、不審な品物が持ち込まれたりしたとの電話から、事件解決につながったケースも多い」
――どのようにして店側の協力を得ているのか。
「店との付き合いは被害品を見つけて終わりではない。日頃から何度も足を運び、被害品が見つかれば頭を下げてお礼を伝える。『刑事と店主』の枠を超え、人と人としての信頼関係を作ることが大事だ。こうして築いた人脈のおかげで、今でも多くの店が頻繁に『波多江刑事。怪しい商品が来ましたよ』と連絡をくれる。こういった協力もあり、窃盗事件が多かった20~30年くらい前は、毎年150点以上の被害品を見つけていた」