福岡県警が、特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)のトップについて、総裁の野村悟被告(79)=二審無期懲役判決=からナンバー2で会長の田上不美夫被告(70)=同=に交代したと断定したことが1日、捜査関係者への取材で分かった。野村被告は県警の工藤会壊滅作戦で逮捕されて以降、約12年にわたり身柄を拘束されており、組織内での求心力を失ったとみている。県警からの報告を受け、県公安委員会は今月中旬にも暴力団対策法に基づき官報で公示する。■野村悟被告と田上不美夫被告【写真】
野村被告は2000年にトップの会長に就任。11年に会長を田上被告に譲り総裁となった後も資金や権限を握ってきたとして、県警は野村被告がトップだとする認定を維持した。今年3月、工藤会が他の暴力団に野村被告の「引退」を文書などで伝えたとの情報を把握し、真偽を慎重に調べていた。
野村被告は、県警の元警部銃撃など市民襲撃4事件で殺人などの罪に問われ、最高裁に上告中。また工藤会が関与した事件の被害者たちから、組織代表者としての責任を問われた訴訟で計1億円超の賠償責任が確定し、同種の複数の訴訟が続く。このため県警は当初、代表者責任を逃れるための「偽装引退」の疑いもあるとみていた。
だが、捜査関係者によると、実際は野村被告が自分から引退を申し出たのではなく、工藤会側が引退を決めて他団体に周知した上で、野村被告を説得したとの見方を強めたという。
背景には、工藤会の弱体化がある。壊滅作戦以降、勢力(構成員と準構成員)は約6分の1になり、みかじめ料などの資金獲得活動も細る。そんな中、組側は、野村被告の裁判費用などを負担し、「総裁本家」と呼ばれる自宅兼事務所の維持、被告が入る福岡拘置所(福岡市)への日参などを続けてきたとみられ、捜査関係者は「金銭的な負担に耐えきれなくなった工藤会側が事実上の引退勧告をした」とみる。
26年ぶりとなるトップ交代について、長く捜査に携わった元県警幹部は「工藤会の顔だった野村被告を引退に追い込んだ。組織弱体化の象徴だ」と強調。後継の田上被告も、最高裁が二審の無期懲役判決を支持すれば社会復帰は事実上不可能となる。県警幹部は「市民襲撃など蛮行を繰り返してきた組織。工藤会が看板を下ろすまで取り締まりの手は緩めない」と話している。(本紙取材班)