7月2日よりNetflixで独占配信される『ガス人間』は全8話からなるSFスリラーです。肉体がガス状(気化状態)になりあらゆるところに侵入、しかも狙った相手の人体に入り殺すという恐るべき能力を持った怪人ガス人間の恐怖を描きます。Netflix『ガス人間』配信記念! 液体人間、透明人間、ハエ男…映画史を彩ったSF怪人たちを振り返るこのガス人間の事件をめぐって刑事やジャーナリスト、動画配信者、反社会的組織等が巻き込まれていく犯罪ドラマでもあります。先に試写で拝見したのですが大変スリリングでイッキミしてしまいました。この配信を記念し、映画に登場した様々な怪人をいくつかご紹介しましょう。(以下文中、敬称略)
まず今回の『ガス人間』自体が、1960年に公開された、東宝映画の『ガス人間第一号』をベースにしています。この映画の製作は田中友幸、監督は本多猪四郎、特技(特撮)監督は円谷英二の3人で、このトリオは1954年の『ゴジラ』を世に送り出した方々です。
『ゴジラ』の大ヒット以降、1956年に『空の大怪獣ラドン』、1957年に『地球防衛軍』、1959年に『宇宙大戦争』等、特撮を使った大掛かりなスペクタクル映画を発表しています。こうした特撮大作映画は東宝にとって人気路線でしたが、手間もお金もかかる。そこで比較的コンパクトなスケールで特撮を使ったエンタメを作ってみようと田中プロデューサーは考えました。そうして生まれたのが後に「変身人間シリーズ」と括られるSFスリラー群です。
科学の力で変異したないし特殊な力を持った人間たちが恐怖を巻き起こす。巨大な怪獣や大規模な侵略を仕掛けてくる宇宙人ではなく等身大の怪人たちを柱としています。その第一弾が1958年の『美女と液体人間』、続いて1960年の『電送人間』(監督は福田純)、そして3作目が『ガス人間第一号』でした。
『美女と液体人間』は肉体が生きているスライムのようになったミュータントの脅威、『電送人間』は物質電送装置を使って犯罪現場に現れる復讐鬼の恐怖が描かれます。『ガス人間第一号』では、科学者に騙されて人体実験を施された男がガス人間となります。科学者はこれからの宇宙時代に備え、過酷な環境でも耐えられる肉体の開発を研究していました。その実験が失敗、肉体がガス化する体質になってしまったのです。これらの設定からもわかるようにこのシリーズの特長は怪人たちの誕生の理由が呪いや魔法といったオカルト的なものではなく、科学が生み出したという点です。
だからこれらはSF映画なのです。どれもおもしろいというか怖い。特に筆者が子どもの頃、これらの映画は土日にテレビでよく放送されていて、結構トラウマになりました。3作の中でも『ガス人間第一号』の評価がとても高く名作扱いとなりました。
それが証拠に、洋邦画の名作をリバイバル上映する試みの「午前十時の映画祭」において、今年はこの『ガス人間第一号』が選ばれるぐらいですから。『ガス人間第一号』の評価が高いのはそのドラマ性かもしれません。ガス人間は恋心を抱いた日本舞踊の師匠の発表会を成功させるために残忍な強盗殺人事件を繰り返すのです。歪んだ恋愛ものです。
さらにガス人間というキャラクターがとてもユニークです。恐らく世界のホラー映画の中でも、体が気化するモンスターってほとんどお目にかかりません。斬新だったのでしょう。東宝は2009年にこれを原作とする舞台版の『ガス人間第一号』を発表しています(ガス人間/水野役は高橋一生)。次いで今回のNetflix版ですから、東宝さんとしてゴジラ並みにこのキャラにポテンシャルを感じているのかもしれません。