「飲酒運転=即クビ」は本当か (李怜香 社会保険労務士)

飲酒運転による懲戒解雇や懲戒免職が後を絶ちません。ニュースでも度々取り上げられ、とくに公務員については「飲酒運転=懲戒免職・退職金なし」という見出しが踊ることも珍しくありません。

直近でも、山形県の40代の県職員が、飲食店で酒を飲んだあと自家用車で仮眠をとり、その後に運転して酒気帯び運転で検挙され、懲戒免職となったニュースが報じられました(参考:40代の県職員が飲酒運転で懲戒免職…飲食店で飲酒→自家用車で仮眠→運転→酒気帯び運転で検挙 さくらんぼテレビニュース 2026/06/12)。

多くの人はこのような報道から「飲酒運転=即クビ、人生終了」をイメージします。

もちろん、飲酒運転は言うまでもなく重大な犯罪であり、絶対にしてはならない行為です。多くは悲惨な事故に結びつき、被害者やその家族の人生を一瞬で壊し、加害者自身も刑事・行政・民事のすべてで重い責任を負うことになります。

しかし、労働法の世界での評価は「飲酒運転=即クビ」というほど単純ではありません。民間企業では、同じ飲酒運転でも処分の重さにかなり幅があり、懲戒解雇が無効になる裁判例も少なくありません(参考:郵便事業会社事件 東京地方裁判所判決 2013年3月26日)。

企業や役所のコンプライアンス意識がかつてないほど厳しく叫ばれる昨今、どんな場合なら懲戒解雇が認められ、どんな場合は争えるのかについて、労働法にくわしい社労士として実務と判例の双方の視点から解説します。
まず、「仕事中の飲酒運転」と「私生活での飲酒運転」は、扱いがまったく違います。

会社の業務として運転し、その途中で飲酒運転をした場合は、業務命令違反・安全配慮義務違反・使用者の信用失墜などがダイレクトに問題になります。そのため、重い懲戒処分が認められやすく、懲戒解雇も当然ありえます。

一方、勤務時間外・私有車での飲酒運転など、いわゆる「私生活上の非行」は、そもそも会社がどこまで口を出せるのかが問題になります。

裁判所は、私生活上の行為でも「会社の社会的評価に重大な悪影響を与える」「企業秩序を大きく乱す」なら懲戒処分はありうるが、そこまでの影響がないのに重い懲戒解雇まで行うと無効になる、という線引きをしています。

ポイントになるのは、労働契約法16条に明文化された「解雇権濫用の法理」です。

解雇が有効と認められるには、(1)客観的に合理的な理由があり、(2)社会通念上相当といえること、この二つを満たさないといけません。飲酒運転だからといって、自動的にこの二つを満たすわけではない、というのが重要です。

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