射殺されたロシア人アーティスト、風刺でプーチン批判…ウクライナの反撃で言論弾圧はさらに強化か?日本にも影響する可能性も

強烈な風刺画でプーチン大統領を批判することで有名であったロシア人アーティストのセミヨン・スクレペツキー氏(本名ロベルト・クゾフコフ)が6月15日、ポーランド東部ビャワポドラスカにある自宅近くで射殺された。政治的迫害を恐れて2021年にロシアからポーランドに亡命していた。その後もプーチン政権やベラルーシのルカシェンコ政権を辛辣に批判しており、殺害される3日前にもドイツにあるロシア大使館前でプーチン大統領と旧ソ連邦の独裁者スターリンを並べた風刺画を掲げて過激な抗議を行い、殺害の直前には生命に対する脅迫被害を訴えていた。【画像】射殺されたロシア人アーティスト、風刺でプーチン批判…ウクライナの反撃で言論弾圧はさらに強化か?日本にも影響する可能性もポーランドのトゥスク首相は、本件は政治的殺人であるとして、ポーランド当局に徹底的な捜査を指示しており、事件に関係した容疑で既に2人のベラルーシ人および1人のジョージア人が拘束された。ロシアが関与していたことが明らかになる場合には、国際的に重大な問題に発展する恐れがある。
ウクライナに対するロシアの全面的侵略戦争は、既に丸4年が経過して5年目に入っている。この戦争は、第二次世界大戦終結以来、欧州において主権国家同士が初めて本格的に交戦状態に入ったものであり、侵略国ロシアも被侵略国ウクライナも軍事力に加えて、経済力・外交力等の国力を駆使した総力戦になっている。

 「戦闘」は、陸・海・空の各戦域に加えて、サイバー空間や言論空間にまで拡大しており、その様相も軍隊同士の正規戦のみならず、諜報・工作機関が関与する非正規戦(破壊活動、暗殺、誘拐等)にまで及んでいる。「戦闘員」の国籍も、当事国ロシアおよびウクライナ両国民のみならず、第三国の国民までもが軍事同盟に基づく派遣兵(北朝鮮)、志願兵や傭兵、更には、様々な協力者として従事している。

 スクレペツキー氏の射殺事件は、このような広がりを見せているウクライナ戦争の中で正しく位置付けて理解する必要がある。
22年2月24日に全面的侵略戦争が始まった当初、モスクワやサンクトペテルブルグの大都市を中心にロシア全土で反戦運動が起きたが、すぐに当局の激しい弾圧に遭って、参加者が逮捕・投獄されたり、外国に逃げたりして下火になった。ロシア政府は、スパイ罪や国家反逆罪の適用を拡大して、反体制派やジャーナリスト、一般市民をも厳しく摘発している。国際的人権団体の推計では、拘束者の数は、2万人を超えている。

 その後、ウクライナ軍の反転攻勢を受けて兵員不足に陥ったロシアが22年9月に30万人の動員令を発したところ、大都市在住の兵役適齢の若者をはじめ、100万人以上が海外に脱出したと言われている。その中には、日本にまで逃げてきた若者もいる。

 ロシア政府は、ウクライナに対する侵略戦争をいまだに「戦争」とは規定しておらず、欧米に唆されたキーウの「ネオナチ政権」に対する「特別軍事作戦」と呼称している。「戦争」と呼称していない理由としては、国民の目から「戦争」の実態、被害および負担を出来るだけ遠ざけることで、国民の間に反戦の言動が広がるのを防ぎつつ、短期決戦で戦争を有利に終結させることにあったと考えられる。

 しかしながら、この当初の目論見に反して、戦争は、かつての旧ソ連時代の大激戦であった独ソ戦(1941〜45年)を超えて5年目に入り、既に130万人以上の戦死傷者を出し、経済は、物不足、高インフレおよび高金利に見舞われ、モスクワやサンクトぺテルブルグ等のロシア国内の都市もウクライナ軍のミサイルや長距離ドローンの攻撃に晒されている状況である。今や戦争の惨禍は、一般ロシア人の目にも明らかになっており、国民の間に不平・不満・不安が広がっている。

 事態を重視したロシア政府は、ロシア国内で戦争批判の声が広がらないようにインターネットやSNSを厳しく規制している。

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