逮捕から38年、滋賀県日野町で1984年に起きた強盗殺人事件で無期懲役が確定し、75歳で病死した阪原弘(ひろむ)・元受刑者の再審無罪が確実となった。再審開始決定から8年にわたり有罪主張を続けてきた検察は、19日にあった大津地裁、弁護団との三者協議で、一転して「白旗」を揚げた。
「有罪主張も、新たな立証も行わない」。地裁の一室で行われた三者協議の冒頭、検事は淡々と切り出した。弁護団が「無罪を求める論告をするのか」と尋ねたが、検事は回答しなかったという。
協議後、報道各社の取材に応じた大津地検の萩原良典次席検事は終始硬い表情だった。「(阪原さんが)犯人であるとの立証が困難と判断した」と説明。一方で、「犯人ではないことを積極的かつ明白に示す証拠があるわけではなく、無罪は主張しない」と述べた。
再審制度の見直しに世間の関心が高まっていることには、「法改正の議論が今回の判断に影響した事実はない」と強調した。
ある検察幹部は方針転換の理由について、再審請求審で最高裁が再審開始を支持した点を挙げた。静岡・一家4人殺害事件や福井・中3女子生徒殺害事件では、高裁の判断で再審開始が確定し、検察が再審公判で有罪主張を維持した。
この幹部は「長年争ってきたが、最高裁の判断は極めて重い。これまでのように有罪主張を続けるわけにはいかなかった」と漏らした。加えて、事件から年月が過ぎ、関係者や捜査・公判に関わった検事らが亡くなったり、記憶が薄れたりしていたことも影響したという。
一方、別の検察幹部は「再審制度の法改正の議論も、考慮する事情になったことは否定できない」と打ち明けた。
事件では、第2次再審請求審で検察が新たに開示した証拠が再審開始の決め手となった。
弁護団によると、この日の協議で、検察に対する更なる証拠開示請求に言及したところ、検事は「我々が有罪主張しないのに、証拠開示をすれば、さらに(再審公判まで)時間がかかる」と消極的な姿勢を見せたという。