警察官を名乗る男から電話で「逮捕状が出ている」と通告された後、SNSで画像が送られてくる。そんな詐欺グループとのやりとりをスマートフォンで疑似体験できるアプリが登場した。東京のIT企業と兵庫県警が協力して開発。巧妙な手口を体感してもらい被害を防ごうと、県が各地でアプリの体験会を開いている。(足立壮)【一目でわかる】兵庫県内でのニセ警察詐欺の認知件数と被害額
神戸市中央区の会議室で今月上旬、30~80歳代の男女28人が、スマホを見つめていた。ニセ警察詐欺を体験できる催し。相手は「詐欺の実行役」だ。
非通知の電話番号からの着信で始まった。「マネーロンダリングの疑いで逮捕状が出ている」。電話とSNSのメッセージで連絡を取り合ううちに、「逮捕状」の画像が送られ、ビデオ通話で制服警察官から事情聴取を受けることになった。
アプリは、生成AI(人工知能)でつくられた映像や音声で、多額の現金をだまし取る典型的なニセ警察詐欺の手口を再現している。一般には公開していない。
体験会に参加した神戸市北区の無職男性(80)は「ネットバンキングを使っていないと答えると、送金方法を説明された。対話がかなりリアルだった」と驚いていた。
アプリを開発したのは新興のIT企業「ToI Nexus(トイ・ネクサス)」。東京都立産業技術高等専門学校5年の西谷颯哲さん(19)が昨年5月、同社を設立した。
西谷さんは以前、米国への留学手続きの際にネット上で1万円をだまし取られた経験をして詐欺対策に関心を持った。そこで通話内容から詐欺を検知して利用者に警告を出すシステム「サギ止め太郎」を考案した。
昨年度、新興企業を対象に課題の解決法を募る県の実証事業「ひょうごTECHイノベーションプロジェクト」に応募。これをきっかけに県警と協議を重ね、詐欺グループとのやりとりを体験できるアプリの製作を依頼された。県警から詐欺被害の実例の情報提供を受け、約1か月で完成させたという。
県警によると、ニセ警察詐欺の被害は今年も相次いでおり、県内では4月末までの認知件数は204件(前年同期比19件増)で、被害額は約22億3370万円に上り、前年の2・4倍に増えている。
県は昨年11月以降、県内各地の商業施設などを会場に、「まさか自分が!を防ぐ」などと銘打って、アプリの体験会を実施してきた。県立消費生活総合センターの田中由起子・学習交流推進課長は「体験してもらうことで、実際に電話がかかってきた際にだまされるリスクが下がるのではないか」と期待する。県は今後も各地で体験会を催す予定にしている。