世界中で大炎上…物議を呼んだ実話ベースの問題映画(5)世界中で大論争…英雄を追い詰めた女性記者の存在とは?

実話をもとにした映画は、観客の心を強く揺さぶる力を持つ。しかし、戦争や宗教、社会問題などを扱う作品は、迫力と責任のはざまで物議を醸すことが多く、その“真実”の描き方は常に議論の的となってきた。今回は、世界でスキャンダルを巻き起こした実話ベースの海外映画を5本セレクト。その背景にある議論や出来事を紐解いていく。第5回。(文・阿部早苗)
監督:クリント・イーストウッド
キャスト:ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ジョン・ハム、オリビア・ワイルド

【作品内容】

 1996年アトランタ五輪で警備員リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は、釘入り爆弾を発見し多くの命を救う。しかしFBIは彼を容疑者視し、メディアも実名報道。無実の彼は世間から中傷され、弁護士ワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)と母ボビ・ジュエル(キャシー・ベイツ)が名誉回復に立ち向かう。

【注目ポイント】

 映画『リチャード・ジュエル』が描くのは、1996年のアトランタ・オリンピックで起きた爆破未遂事件。無実の罪で名誉を傷つけられた実在の警備員、リチャード・ジュエルに材をとった作品である。

 ジュエルは会場で不審なリュックを発見し、その中に仕掛けられていた爆弾を通報。迅速な避難誘導で多くの命を救った。しかし事件からわずか3日後、FBIが彼を容疑者とする情報がメディアに漏れ、英雄から一転して世間の非難を浴びることになる。真犯人が逮捕され、ジュエルの潔白が証明されるまでには6年を要した。

 そんな本作で特に物議を醸したのが、ジュエルを追い詰める、これまた実在する人物であるアトランタ・ジャーナル・コンスティテューション紙の女性記者、キャシー・スクラッグス(オリビア・ワイルド)の描かれ方である。

 映画では、彼女がFBI捜査官と性的関係を持ち、その見返りとしてジュエルの容疑者情報を得る様子が描かれている。このジャーナリズムの倫理を大きく逸脱する描写が問題となったのは、事実と異なっていたからだ。

 この描写に対して、スクラッグス氏が所属していた新聞社やジャーナリスト団体が猛烈に反発。「従業員を性的に搾取したり、証言と引き換えに情報源に性的な行為を認めたり、そういう行為を助長しているかのように描かれている。これは全くの偽りであり、悪意がある。非常に不快で中傷的」とクリント・イーストウッド監督や脚本家、製作を担ったワーナー・ブラザーズに対し、新聞社側は抗議を行った。

 これに対し、ワーナー・ブラザーズは「アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション紙の主張には一切の根拠がない」と反論。映画公開当時、この問題はハリウッドの内外で大きな議論を呼ぶこととなった。

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