まさかの罠だった…「郵便不正事件」で無実の厚労省局長を逮捕、検察が仕掛けた“恐るべき手口”

2009年に世を騒がせた、偽の障害者団体による障害者郵便制度悪用事件=通称「郵便不正事件」を覚えているだろうか。厚生労働省の障害保健福祉部企画課長だった村木厚子氏はまったくの無実であったにもかかわらず、これに加担したとして逮捕・起訴された。どのようにして冤罪(えんざい)は生まれるのか?“黒幕”たる検察の驚くべき手口を、村木氏が自らの経験を元に明かす。※本稿は、全国社会福祉協議会会長の村木厚子『おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。【この記事の画像を見る】● ある日突然「郵便不正事件」の 容疑者になった経緯とは

 「郵便不正事件」(編集部注/自称障害者団体「凛の会」が、厚生労働省障害保健福祉部企画課が発行した障害者団体証明を利用し、障害者団体向けの郵便料金の割引制度である「心身障害者用低料第三種郵便物制度」を悪用し、約100億円単位の不正減免を受けていた)について私が初めて知ったのは、2009年春のマスコミ報道です。

 「凜の会」のC会長が郵便法違反で大阪地検特捜部に逮捕されたこと、同会が郵便料金割引制度を悪用して荒稼ぎしていたことなどが報じられました。

 厚労省発行の証明書の存在が明らかになると、私にも取材がありました。役所で証明書を発行すれば必ず稟議書や決裁文書が残るので、担当部署の社会参加推進室に確認したところ、何も残っていないとのことで、「凜の会」が証明書を偽造したのかと思っていました。

 それだけに、5月に、2004年当時担当だったB係長(編集部注/偽証明書を作った実行犯。有罪判決を受けて結審)が、問題の証明書について稟議書を偽造した疑いで逮捕されたという報道には仰天しました。
その数日後には、厚労省が組織的に関与しているとの情報が流れ始め、元上司のAさんが家宅捜索を受けました。Aさんとは電話で、「何も記憶にないよね」と確認し合っていました。

 ところが、その直後、当のAさんが「石井議員(編集部注/国会議員の石井一)から証明書の発行を頼まれ、それを部下の村木に指示した」と検察に話していると報じられ、そのうちに、B係長が「村木課長に指示された」と話していると大きく報道されたのです。

 メディアの関心は私に集中し、厚労省には記者やカメラマンが押し寄せました。

● マスコミから逃げ回るなか 大阪地検から呼び出される

 一連の記事について質問を浴びせられても、こちらはまったく事情がわからないので答えようがなく、「書いた記者に聞いて下さい」と言いたい気持ちです。

 彼らは立ち入り禁止区域にまで入り込み、私を待ち伏せしました。

 慌てて走って逃げましたが、心臓がバクバクして息もできず、手足がガタガタ震えました。記者たちに追いかけまわされて、自分の執務室にいることもできません。別の部屋に隠れて仕事をし、トイレに行くときはあたりを見回し、走ってトイレに駆け込むというありさまでした。

 マスコミの取材は家にも来ます。自宅に帰るに帰れず、ホテルに泊まったり、一人暮らしをしていた長女のアパートに泊まったりするようになりました。

 その頃の私は、雇用均等・児童家庭局長として、育児・介護休業法改正などに取り組んでいました。

 法案は衆議院で審議されていて、私が国会に出て行かないわけにはいきません。国会に行けば記者に取り囲まれ、議員からも事件について質問が出る。

 「問題になっている局長の答弁は受けられない」と言う議員もいて、法案についての質問がすべて舛添要一大臣に行ってしまうこともあり、とても心苦しい思いをしました。

 他の職員は次々と検察に呼ばれているようなのに、私だけは呼ばれない。それでも報道では自分の名前が飛び交うという気味の悪い状態が続きます。

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