女の子の「なりたい職業」で常に上位にランクインしている“白衣の天使”看護師。
人の命を救うという使命感にあふれた職業にもかかわらず、「献身」の名のもとに過重労働やさまざまなハラスメントといった過酷な状況に曝され、限界を感じて職場を去る看護師も多い。
このような状況が続けば、病院は危機的状況に陥り、我々はこれまで「当たり前」に受けてきた医療サービスを受けることができなくなるかもしれない。
看護の世界に何が起こっているのか――。看護ジャーナリストの筆者が真相を探った(「ナースクライシス」は5回の短期連載でお届けします。今回は2回目です)。【画像でみる】亡くなった高橋蓮さんのSNS
【1回目:“憧れの職業”に何が起きたか 「看護学校」定員割れの衝撃 「不要論」と「新たなニーズ」の間で揺れる准看護師という存在】
■ある看護学生の自死
看護師は長年、子どもたちの「なりたい職業ランキング」で上位を占める人気の職業だ。多くの人が「人の役に立ちたい」「医療に貢献したい」という純粋な気持ちで看護の道を志す。
しかし、その夢を実現しようと看護学校や大学に入学した学生は、ときとして想像していなかった現実に直面することがある。
2022年7月13日、岐阜県の看護専門学校2年生だった高橋蓮さんが、病院での看護実習期間中に自ら命を絶った。SNSには教員からのハラスメントがあったことをにおわせることが書かれていた。
19歳の若者が、なぜこのような選択をしなければならなかったのか。蓮さんの父親である裕樹さん(51歳)は、息子の死を無駄にしないため、看護教育を変える活動を始めた。
■「まるで軍隊」のような学校
蓮さんの死後、裕樹さんは同じように教員からのハラスメントに苦しむ看護学生の相談窓口「NPO法人全国看護学生はぐくみネット」を開設。公認心理士や弁護士、看護師などの専門家とともに、オンラインやLINEで相談に応じている。
相談は2日に1件のペースで寄せられ、特に社会人経験のある学生からの相談が多いという。
「相談では、理不尽なハラスメントだけでなく、失敗ばかりを指摘する指導やマイクロアグレッション(無意識の偏見や思い込みが言動に表れること)、睡眠を削る過重な課題によって心を追い詰められ、涙ながらに語る学生もいます。形式上は“指導”であっても、うつや適応障害につながる現実があります」(裕樹さん)
はぐくみネットの活動を通じて見えてきたのは、看護の教育現場に蔓延する深刻なハラスメントの実態だ。同組織が知る限り、北海道や千葉県、愛知県、兵庫県など、全国各地から相談が寄せられる。