いまだ根絶からはほど遠い、飲酒運転。死亡事故には社会の関心や報道が集まるが、生き残った被害者にも地獄が待ち受けているということは、どうしても見過ごされがちだ。
大阪府堺市で去年に発生した飲酒危険運転事件の被害者(20代女性)が、MBSの取材に応じた。酩酊状態でハンドルを握った被告は、被害者の夢や大切にしていたものを、ことごとく奪い去った。(松本陸)
大阪府堺市に住む20代の女性・Aさん。自らが顔に負った傷を、病棟で初めて目にした時の感情を、いまでも覚えている。
Aさん
「地獄に突き落とされたような感覚。すごくショックでした。今まで頑張ってきたことが何やったんやろうと…きれいになりたいと思って美容に力を入れてきたので。こんな傷だらけになってしまって…。きれいになるのかな…と、今も大きな不安と恐怖に押しつぶされています」
凄惨な事故が起きたのは、去年6月7日の午前3時前だった。
木村穂乃香被告(28)が運転する普通乗用車が、堺市中区深井水池町の道路上で、Aさんが運転する自転車に接触。Aさんは転倒し、さらに木村被告の車の左前輪でひかれた。
Aさんは道路左端の自転車レーンを走行していたが、木村被告の車に突然、追突された。Aさんは、大きな衝撃を受けたことだけ覚えていて、それ以降の記憶がない。
意識を取り戻した時には、手足は器具で固定され、口にはチューブが挿入されていた。母親によると、Aさんが思わず流した涙には、血が混じっていたという。
奇跡的に内臓の損傷や骨折はなかったが、顔面に受けた傷が大きく、頬や口の中、耳などを数十針縫合する処置がなされた。また、腰から臀部にかけての皮膚が大きくえぐられ、太もも内側の皮膚を移植する手術も行われた。
病床でAさんは、悲痛な心境や、何とか前を向こうと自らを奮い立たせる心境などをノートに記した。
Aさんが病室でつけていた日記
6月10日
「顔の傷は見れない、見たくない。腰の傷は痛すぎる」
「包帯が取れて初めて自分の手足の傷を見た時、悲しすぎた。記憶が無い間で、自分は何をされたのか、何が起きたのか。あまりにも残酷すぎて」
6月15日
「事故にあわなければこんな様にはなっていない。顔も手足の傷も。辛いし憎いし、怒りもこみあげて涙が出る。最近ふとした時に涙が出そうになるけどこらえる。前向きにいるしかない。先の楽しみな事も考えて乗り超えてやる。これから待っている事はきっと素晴らしいことばっかりやと思う。そうであってくれ」