歴史の闇に消えた「真実」は、なぜこれほどまで人を惹きつけるのか。未解決の殺人事件を題材にした映画には、単なる犯人捜しを超えた、人間の執念や社会の歪み、そして“答えのない恐怖”が色濃く描かれる。今回は、実在の事件やそれに着想を得た物語をもとに、観る者の心をざわつかせる海外映画5作品を厳選して紹介する。第3回。(文・小室新一)
監督:アトム・エゴヤン
キャスト:コリン・ファース、リース・ウィザースプーン、ミレイユ・イーノス
【作品内容】
1993年、アーカンソー州の小さな町で3人の児童が惨殺される事件が発生する。警察は、黒魔術や悪魔崇拝に傾倒していたとされる10代の少年3人を逮捕した。
町中が怒りに震え、有罪を確信する中、私立探偵のロン・ラックスは捜査の矛盾に気づき、独自に調査を開始する。
一方、被害者の母パムもまた、裁判が進むにつれて浮き彫りになる不可解な証言に、真犯人は他にいるのではないかと疑念を抱き始めていく。
【注目ポイント】
『英国王のスピーチ』(2010)のコリン・ファースと『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』(2005)のリース・ウィザースプーンという、アカデミー賞俳優二人が共演した重厚な法廷サスペンス。
コリン・ファースが演じる探偵の冷静な視点と、リース・ウィザースプーンが演じる悲しみの果てに真実を求め始める母親の苦悩が描かれている。
この二人の視点が交錯することで、事件がいかに「偏見」によって歪められていったかが浮き彫りになっていく。
最大の見どころは、これが実際に20年以上も争われた冤罪事件であるという事実の重みだろう。
後に一部和解するものの真犯人は不明である。証拠よりも「見た目が怪しい」「音楽の趣味が不気味」といった理由で有罪へと傾いていく町の空気感は、現代のSNS社会にも通じる恐ろしさがある。
未解決のまま残された「真実の結び目(ノット)」を、映画は容赦なく観客に突きつけていく。