会社の社員が突然の逮捕!勾留後保釈をされたが、会社は一体どのような対応をすればよいのだろうか?以前と同じように働かせるのか、自宅待機なのか、休職にするのか、その場合の賃金はどうすればいいのか……。意外と身近で起こるかもしれない「もしも」の時に取れる対応について説明しよう。※本稿は、弁護士の小鍛冶広道、小山博章、宇野由隆、柏戸夏子、金澤 康『社員が逮捕されたときに読む100問100答』(労働開発研究会)の一部を抜粋・編集したものです。【この記事の画像を見る】● 保釈中の出勤を制限する法律はないが 保釈条件違反には注意が必要
Q 社員が逮捕・勾留後保釈されました。従前のとおり働かせるべきでしょうか。
A 保釈中の社員を出勤させること自体に法的な問題はありませんが、保釈条件(特に事件関係者との接触禁止)に違反しないよう注意が必要です。また、出勤を認めるかどうかは、事案ごとに判断し、復帰のため職場環境の調整が整っているか、懲戒処分が完了しているか等の要素が重要となります。
保釈中であることを理由として社員の出勤を制限する法律はありませんので、会社が出勤を認めたとしても違法ではありません。
ただし、保釈条件に違反しないかについては注意が必要です。
裁判所は、保釈に当たって、住所を制限する、旅行を制限するなどの条件を付することができるのですが(刑訴法93条3項)、その保釈条件としてよく設けられるのが、事件関係者との接触禁止の条件です。事件関係者は、裁判における重要な証人となり得るので、保釈中にそのような証人と接触するのは望ましくないということから、しばしば、そのような条件が付されます。
会社関係者を被害者とする犯罪や、会社内で行われた犯罪においては、事件関係者が会社内にいることになりますので、上記のような接触禁止の条件が設けられている場合において会社での勤務を認めると、保釈条件に反する可能性があります。
保釈条件は、被告人に課せられた条件ですので(違反すると保釈が取り消される場合があります)、会社が保釈条件違反に加担したからといって、会社に何か刑罰や制裁があるものではありませんが、そのような事態はコンプライアンス上、望ましくないでしょう。
● 刑事裁判を抱えた社員がいることで 職場や取引先が混乱しかねない
保釈中の社員について、出勤を認めるべきか否かは、事案ごとの判断になりますが、復帰のために職場環境の調整が整っているか、懲戒処分が完了しているか等の要素が重要です。
社員(被告人)が公訴事実について争っており、事実認定に不確定要素がある場合においては、当該社員に対する懲戒処分の内容を決めることが難しく、職場環境の調整も困難でしょうから、安易に職場復帰を認めるべきではないでしょう。
そのような不安定な状態で職場復帰を認めることは、取引先等に対する信用失墜や、周囲の社員にも不安を与え、職場秩序の乱れ、職場環境の悪化にもつながります。また、自白事件であっても、犯罪の内容からして相応に重い懲戒処分が想定される事件についても、懲戒処分が完了するまでは職場復帰を認めるべきではないでしょう。これらの場合には、自宅待機を命じることが相当です(保釈中の自宅待機命令については次Q&A参照)。
一方、当該犯罪が軽微であり、懲戒処分としても訓戒・減給程度の軽い処分が想定されるような場合には、懲戒処分未了の段階で、出勤を認めるという選択肢もあり得るでしょう。ただし、実務では軽微な事案は略式命令で終わることが多いので、正式裁判として起訴されているという時点で、ある程度重い犯罪であることが想定されることには注意が必要です。