京都府南丹市で市立園部小5年だった安達結希(ゆき)さん(11)が3月から行方不明となり、遺体で見つかった事件。4月16日未明、府警が結希さんの養父、優季(ゆうき)容疑者(37)を死体遺棄の疑いで逮捕するという重大局面を迎えた。遺体発見から異例の「スピード逮捕」となった背後には、捜査関係者が注目する数々の「不自然な点」があった。【写真】京都男児遺体遺棄事件 元捜査員が注目する数々の「不自然な点」 重なりすぎる偶然、ポスターに違和感府警は16日午前10時から捜査一課長らが会見。調べに対し、優季容疑者は「私のやったことに間違いありません」と容疑を認めていると説明した。3月23日の朝までは結希さんの生存が確認されたことや、遺体は発見場所の前に複数回、移動した可能性があることも明らかにした。共犯がいるという供述は「現時点でない」としている。
16日午後、優季容疑者は京都地検に送検された。現場を取材する週刊誌記者は「送検時、南丹署の周辺には多くの報道陣が詰めかけましたが、車内の姿は一切見えませんでした」と振り返る。
いつ、なぜ、結希さんは亡くなったのか。捜査の焦点は今後、死亡の経緯と優季容疑者の関与に移る。
長年、殺人事件などの捜査を手がけた元警視庁捜査一課の佐藤誠さんは、今回の事件はあまりに多くの「偶然」と「違和感」が重なっていると分析する。
「まず、異常に早い110番通報です」
■準備の良さと、いくつも重なる偶然
優季容疑者は、3月23日正午ごろ、学校側から結希さんがいなくなったという知らせが入るとすぐに通報している。これは、刑事の感覚からすると極めて不自然だと言う。
「通常、子どもが見当たらなければ、まずは家の中や周囲、学校に連絡して必死に探すものです。それをせず、即座に警察へ通報するのは『探しても見つからない(すでに死んでいる)』ことを知っている人の振る舞いに見えます」
失踪翌日の24日には、行方不明の結希さんの情報を呼び掛けるポスターが市内に張られたが、これにも強い違和感を覚えたという。
「写真の準備の良さやレイアウトなどから見たポスターの完成度。これらは、気が動転している状況で作れるものではなく、準備がよすぎます。『いなくなった後の捜索』のためではなく、『いなくなったことを周知させるための工作』に見えます」
そして、この事件は「あまりにも偶然が重なっている」と語る。
たまたま事件が起きた日は卒業式、たまたまスクールバスに乗らなかった。たまたま携帯電話を持っておらず、たまたま目撃者もいない、たまたま防犯カメラにも写っていない、たまたま通学かばんが出てきた……。これほどの「たまたま」は絶対に続かないと話す。
「1日に偶然が1回か2回はあっても、5回も6回も重なれば、刑事であれば事件だと思います」
■殺害認める供述 動機は?いつ亡くなったのか?
多くの謎が残る中、今後の展開はどうなるか。捜査関係者によると、優季容疑者は結希さんの殺害も認める供述をしているとされる。
佐藤さんは「動機とトリガーの解明が焦点になる」という。
「動機は以前からあったとみられますが、何が『引き金』、つまりトリガーになったかの解明が取り調べの核心になると思います」
南丹市の現地に入っている、元兵庫県警捜査一課の飛松五男さんが注目するのは、結希さんが亡くなった時期だ。
「行方不明になったのが3月23日。通学かばんが見つかったのが29日。ひょっとしたら、失踪後もしばらくの間、隠されたり監禁されたりして生きていた可能性もある。これから裏付けを取っていくところやね」
遺体が複数回、動かされたことについては「隠したり埋めたりする場所はいっぱいある。遺体は30~40キロも重さがある。警察が張り込んどる中で、どうやって何度も動かしたのか。そこが本当に解せんのよ」といぶかしむ。
「本人は『自分がやった』と言っているかもしれんけど、警察は本人の供述だけ信じることなどしない。犯人しか知り得ない『秘密の暴露』を含め、供述内容と客観的な証拠に矛盾がないか本格的に詰めていくはずや」
(AERA編集部・野村昌二、上田耕司)