〈「お宅の息子を預かった」車内から見つかったのは“7歳少年の遺体”⋯誘拐犯が「人質を殺害した」衝撃の理由(昭和35年の事件)〉 から続く【写真】この記事の写真を見る(2枚)身代金目的の誘拐事件でありながら、犯人は金を手にすることなく人質を殺害した。そこには、警察の追跡でも偶発的な事故でもない、“ある歪んだ発想”があった。昭和35年に起きたこの事件は、のちに報道のあり方すら変えることになる。エリート歯科医が7歳の少年に目をつけ、追い詰められ、そして最悪の決断に至るまで――その全貌を、鉄人社の新刊『 高度経済成長期の日本で起きた37の怖い事件 』よりお届けする。(全2回の2回目/ 最初から読む )
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今まで見たこともない子供に不信感を募らせた大家が尋ねると「おじさんと一緒に目黒から来た。頭が痛いから寝ていた」のだという。大家はてっきり親戚の子供なのだろうと思い、「じゃあ坊や、おとなしくお利口にしているのよ」と告げ主婦と一緒に家を出る。
ところが、17日の夕刊に踊る「天地堂の長男誘拐される」「二百万円出せ。登校途中を狙う」「金出せの脅迫電話。社長脅される」などの見出しを目にした主婦は、もしかしたらあの子がと、18日朝、警察に申し出る。
主婦の証言から、子供は雅樹ちゃんで、本山が犯人の可能性が高いと睨んだ警察は同日午後から本山を張り込む。
20時半過ぎ、家の前に停まっていたルノーが急発進。高井戸署のパトカーがそれを追うが、同乗していた刑事課長に急用ができたため、そのまま本山をやり過ごすという信じられない大失態を犯した。
そして、19日午前6時50分、杉並区上高井戸5丁目在住の主婦が自宅前の路上にルノーが放置されているのに気づく。当時、この辺りは麦畑が続く農村地帯。何か不自然なものを感じた主婦が車内を覗き込むと米俵が見えた。
いよいよ不審に思い警察に通報。ほどなく駆けつけた高井戸署の捜査員が米俵の中から変わり果てた雅樹ちゃんを発見する。まさに最悪の結末。警察は直ちに本山を全国に指名手配した。