実話をもとにした映画は、観客の心を強く揺さぶる力を持つ。しかし、戦争や宗教、社会問題などを扱う作品は、迫力と責任のはざまで物議を醸すことが多く、その“真実”の描き方は常に議論の的となってきた。今回は、世界でスキャンダルを巻き起こした実話ベースの海外映画を5本セレクト。その背景にある議論や出来事を紐解いていく。第2回。(文・阿部早苗)
監督:スチュアート・ローゼンバーグ
原作:ジェイ・アンソン
キャスト:ジェームズ・ブローリン、マーゴット・キダー、ロッド・スタイガー
【作品内容】
1974年11月、ロングアイランドのアミティヴィルで長男が家族を惨殺する事件が発生する。それから1年後、ジョージ・ラッツ夫妻は子供のため広い屋敷を破格で購入するが、引越し直後から異様な現象に悩まされる。
【注目ポイント】
アメリカン・ホラー映画の金字塔として広く知られている映画『悪魔の棲む家』。実話を基に描かれたホラー映画として話題となった作品だ。
映画の元となったのは、1974年11月13日にニューヨーク州ロングアイランドのアミティヴィルで発生した一家惨殺事件。当時23歳の長男ロナルド・デフェオ・ジュニアが、就寝中の両親と兄弟4人をライフルで射殺。逮捕されたロナルドは当初「頭の中の悪霊に家族を皆殺しにするよう命じられた」と供述した。
事件から約1年後、ジョージとキャシー・ラッツ夫妻は、家の過去の事件を知りつつも破格の安値に魅力を感じて引っ越した。しかし入居後すぐに奇妙な音が聞こえたり、夜中に玄関の扉が突然開閉するなどの恐怖体験が相次いだ。
ジョージはほぼ毎晩、夜中の3時15分に目覚めたと語り、それは一家殺人が起きたとされる時間と一致していた。恐怖のあまり、夫妻は入居からわずか28日で家を去った。
そんな夫妻の体験談をもとに、作家ジェイ・アンソンが「アミティヴィルの恐怖」を執筆し、映画化された本作。
しかし、その後の調査で夫妻の体験の多くは創作の可能性が指摘された。さらに、超心理学者スティーヴン・カプランとロクサーヌ・カプランの研究では、ルッツ家の語る物語は利益目的で意図的に作られ、メディアの注目を集めるためにオカルト事件をでっち上げた可能性があるという。
こうした経緯により、本作は実話映画としての信憑性をめぐる議論を呼び続ける作品となった。