吸うと手足がけいれんし、ふらつきながら歩く姿から「ゾンビたばこ」と呼ばれる薬物の使用が、今年に入り大阪や広島でも確認された。これまで沖縄や東京など一部の地域だけだったが、全国での蔓延(まんえん)が懸念され始めた。未成年でも吸引が罰せられない「電子たばこ」の加熱装置で吸えるため、捜査当局が若者への広がりを警戒している。(平野真由)【写真】ゾンビたばこと呼ばれる「エトミデート」が入っていたカートリッジ(右)と吸引用の電子たばこ。近畿厚生局麻薬取締部が事件で押収した
■電子たばこ装置で
ゾンビたばことは、指定薬物「エトミデート」の俗称。主にリキッド(液体)状でカートリッジ(小型の容器)に詰めて使われる。電子たばこの装置で加熱し、蒸気にして吸う。中枢神経に作用し、強い多幸感が得られるとされる。一方で依存性が高く、大量に摂取すると意識を失ったり、手足がけいれんしたりする。
海外では鎮静剤として手術など医療現場で使われるが、日本では未承認。シンガポールや香港、台湾などアジア各地で乱用が問題となり、日本でも昨年から注目され始めた。厚生労働省は昨年5月、医薬品医療機器法で輸入や販売、所持、使用を原則禁じる「指定薬物」とした。
■SNS通じ売買
エトミデートが国内で初めて押収されたのは、昨年2月。沖縄県警が職務質問で所持品検査をした人物からだった。沖縄では「笑気麻酔」と称され、若者の間で広まっているという。
大阪では今年に入り、摘発が相次いで明らかになった。近畿厚生局麻薬取締部は2月、大阪市の無職の男(32)と内縁の妻(24)を同法違反(指定薬物の使用)容疑で逮捕した。2人の家から、エトミデートを入れるカートリッジ27個と電子たばこの加熱装置を押収した。
2人はSNSを通じて知り合った密売人から譲り受け、吸うようになったという。男は調べに「酒に酔った感覚で、音楽が鮮明に聞こえる」「砂漠で水を欲するような衝動で購入していた」と述べた。
大量の密輸も確認された。関西空港からエトミデート入りのカートリッジ約1000個をスーツケースに入れ、菓子袋で包装して持ち込もうとしたとして、大阪府警が今年1月、タイ国籍の女(31)を同法違反(営利目的共同輸入)容疑で逮捕したと発表した。