2作のスペシャルドラマと、その前日譚となる連続ドラマ『風間公親-教場0-』(2023年/フジテレビ系)の放送を経て、その人気を確固たるものにしている『教場』シリーズ。約2年半ぶりの新作となる映画『教場 Reunion』が1月1日よりNetflixで配信開始されると、続けて劇場公開された映画『教場 Requiem』は早くも興行収入10億円を突破するなど(※)、上々のスタートを見せている。【写真】木村拓哉演じる教官の風間公親シリーズごとに一新される生徒キャストの面々にも注目が集まるなか、やはり『教場』シリーズになくてはならないのが、木村拓哉演じる教官の風間公親だろう。警察学校の第3教場に君臨する風間は、決して笑顔を見せることなく冷静沈着な眼差しで教場を管轄し、警察官としての適性がない生徒を詰問しては、容赦なく退行届を突きつける。
しかし、冷酷無比な風間にも知られざる過去があった。厳しい言葉を投げかけながらも大切に育ててきた部下の遠野(北村匠海)と、今は義眼をつけている右目を失った事件が語られる『風間公親-教場0-』では、彼がなぜここまで厳格にも警察官となるべき人物をジャッジする人間になったのか、そのきっかけとなるエピソードが描かれる。警察組織への憎しみと部下を救えなかった後悔を抱える風間の過去が下敷きになっているからこそ、本物の警察官になるために切磋琢磨する生徒たちと向き合う彼の一貫した言動と、時折、口に出す思いやりの込められた言葉が胸に突き刺さる。
『教場』シリーズを観ていると、劇中に登場する歪んだ思想や軽薄な考えを持つような人物が、実際に警察官を目指す生徒たちの中に存在しているのかと疑ってしまう部分もあるが、2026年冬ドラマでは組織にただ従うだけではなく、個人の正義を持ってして、任務を遂行しようとする警察側のキャラクターが目立つ。
予想もつかない展開が繰り広げられている日曜劇場『リブート』(TBS系)では、裏社会の組織と繋がっていた悪徳警官の儀堂(鈴木亮平)はもちろん、彼に“リブート”している早瀬(松山ケンイチ/鈴木亮平)をずっと疑っていた監察官の真北(伊藤英明)にも裏の顔があることが明らかになった。真北は表向きは合六(北村有起哉)や冬橋(永瀬廉)とつながる儀堂をマークしながらも、裏では彼と取引をしていた。逮捕せずに見逃す代わりに、大物政治家の汚職を摘発しようとしていた真北に対して、早瀬は儀堂と彼の妻である麻友(黒木メイサ)を助けるために協力を要請する。しかし、真北は「多少の犠牲を払っても、より多くの市民を守る。これが僕なりの正義です」と持論を展開する。警察組織に属しながらも、自らの確固たる正義を持つ彼の考え方が顕著に表れたシーンだった。
また、奇抜な行動で耳目を集めているのが、『再会~Silent Truth~』(テレビ朝日系)で主人公の飛奈(竹内涼真)とバディを組む神奈川県警捜査一課の刑事・南良(江口のりこ)だ。小学生のときに埋めた拳銃の秘密を共有した4人の同級生たちのヒューマンラブミステリーが描かれる本作において、南良は彼らの秘密を暴く側の人間だ。
ただ、冷徹な捜査で4人を追い詰めるというよりは、独自のやり方で事件の真実に迫る彼女の挙動はコミカルに描かれている。それがかえって不気味ではあるのだが、飄々として何を考えているのかわからない彼女の存在が、登場人物たちの心を波立たせていた。さらに、南良は23年前に起きた事件現場で、当時小学生だった飛奈が銀行強盗犯を射殺したことを把握しながらも、上層部には知らせずに秘匿する道を選んだ。しかも、それは飛奈に対する温情ではなく、彼から理由を問われた際には「あの事件はまだ終わっていないからです」と淡々と答えた。普通なら飛奈の過去は組織で共有するべき情報のはずで、県警一の変わり者と称される南良も、警察組織とは異なる正義を持つキャラクターといえるだろう。それはつまり、真北や南良のように正攻法ではない奇策を取らなければ、真実を暴くことができない計画的な組織犯罪や迷宮入りしてしまう事件が存在していることを意味する。
インターネット環境が整備され、SNSの登場によって匿名で不特定多数の人々がつながることができる令和の時代において、罪を犯した者を見つけ出そうとするのは警察だけに限らない。ドラマ『東京P.D. 警視庁広報2係』(フジテレビ系)の第5話では、警察が被疑者として追っていた連続殺人事件の犯人と思しき男の個人名と顔写真がネット上に晒され、SNSアカウントから家族の身元までもが拡散された。真偽不明の情報に飛びついて、安全な立場から無責任に糾弾する私刑意識の危うさと恐ろしさが、本エピソードを通してあらためて浮き彫りになった。
現代では多様な警察像が描かれているが、昔から刑事ドラマには個性的な刑事が多く登場しており、『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)や『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)が長年にわたって視聴者に愛されている理由の一端でもあった。さらに、1997年に放送が開始されたドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)の登場によって、警察内部の権力争いや所轄と警視庁の管轄の違いなど、現実を反映したリアリティのある描写もドラマに盛り込まれるようになった。情熱的で市民を守るためには命令に背くこともいとわない青島(織田裕二)のような、人間味溢れる刑事にどこか惹かれてしまうのは、勧善懲悪の王道刑事ドラマだけではなくなった現代においても変わらないだろう。
「警察=正義」という単純な公式ではなく、それぞれが自身の考える正義を軸にして事件と向き合う。組織に属しながらも、己が信じる信念に従って柔軟に行動する。2026年冬ドラマが次々と佳境を迎えるなか、一風変わった警察官たちの予期せぬ行動にも目を光らせたい。
参照
※ https://x.com/kazamakyojo/status/2027242357436113199